アングル:円売りからドル買いにエンジン転換、他通貨に「力」分散

2015年3月9日(月)19時27分

[東京 9日 ロイター] - ドル/円のエンジンが円売りからドル買いに転換しつつある。2月米雇用統計が上振れ、早期の米利上げを織り込まざるを得なくなってきたためだ。

一方、日銀の追加緩和期待など円売り材料は後退。ドル買いに対する売りの「力」は他通貨に分散し、ドル/円の上昇ペースは緩やかになりそうだとの見方も出ている。

2月米雇用統計は、非農業部門雇用者数が29万5000人増と、市場予想の24万人増を上回った。失業率も2008年5月以来の水準となる5.5%に低下し、ポジティブサプライズを誘発。119円後半で推移していたドル/円は一時、121.29円まで上昇した。

雇用統計を受け、3月17─18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、ゼロ金利解除の目安ともなっている声明文の中の「忍耐強く」の文言を外し、利上げ時期決定に自由度を確保することが、ほぼ確実になったとみられている。

今週のドル/円は120円台の値固めが想定され、週後半の米小売売上高などが6月米利上げを正当化する内容となれば「昨年12月高値121.86円を目指す流れも視野に入る」(みずほ証券・投資情報部のFXストラテジスト、由井謙二氏)との見方も出ている。

<リスクオフ・株安・円高を警戒の声も>

ただ、ドル/円が「130円の方向に上昇スピードを加速させる可能性は低い」(UBS証券・ウェルス・マネジメント部の最高投資責任者、中窪文男氏)との見方も少なくない。

その要因の1つが、政府・日銀の姿勢だ。これまで日銀による追加緩和期待が円売り材料となってきたが、足元の市場ではそれほど高まっていない。

また、円安は地方経済への影響も大きいことから「とりあえず4月の統一地方選が終わるまでは、円安にするなというプレッシャーがかかりそうだ」(UBS証券の中窪氏)という。

シティグループ証券・チーフFXストラテジスト、高島修氏は、日銀の緩和期待による円売り相場とは異なり、ドル買い相場の場合、短期筋の売りは円のみならずユーロや豪ドルなど幅広い通貨に分散すると指摘。「市場がリスク回避色を強めるのであれば、なおさら、円ショートに集中しにくくなる」と話す。

また、米株を起点とした株安波及の懸念も、円安を進みにくくする要因だ。これまでダウ工業平均30種やS&P総合500種は史上最高値圏で推移してきたことから、米国での早期利上げ観測が強くなってきた場合、いったん調整局面に入る可能性がある。

実際、6日の米株式市場では、ダウが約1カ月ぶりの安値水準に反落。S&P総合500種も、ここ2カ月で最大の下げとなり、ブラジル、メキシコ、南アフリカなどの新興国通貨も崩れた。「株安はリスクオフ要因となり、ドル買いと同時に円買いを促す」(国内証券)ことから、警戒感も強まっている。

(杉山健太郎 編集:伊賀大記)

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