スピード落とすリスクオン相場、日本株は近年にない底堅さも

2015年3月9日(月)17時28分

[東京 9日 ロイター] - リスクオン相場はスピードダウン。2月米雇用統計が上振れたことで米株が急落、日本株にも利益確定売りが先行している。ドル/円も121円台に乗せたが、固有の円売り材料が乏しいため、今後、円安進行ペースは落ちるとの見方が多い。

ただ、景気や企業業績拡大への期待感は根強く、日本株の先高観は維持されており、以前にはみられなかったような底堅さも出ている。

<金融相場に水差した米雇用統計>

2月米雇用統計は市場予想を上回り、米経済の足取りの強さをあらためて示した。だが、足元のリスクオン相場は金融緩和をベースにした金融相場であり、早期の米利上げ観測はマイナス要因となる。景気の良さを素直に好感する「業績相場」にはまだ移行できていない。

欧州中央銀行(ECB)が米連邦準備理事会(FRB)と入れ替わるように量的緩和を開始しており、6日の海外市場では、欧州株は総じてプラス圏で終了。世界同時の調整局面には入らなかったが、早期の米利上げ観測の強まりは、歴史的な高値更新を続けていた株式市場をいったんクールダウンさせそうだ。

SMBC日興証券・株式ストラテジストの圷正嗣氏は「米株は今後、調整含みの展開になるとみている。米雇用統計が驚くほど強い数字となり、利上げ時期の前倒し観測が出やすくなる。米企業は収益モメンタムが鈍化しており、ただでさえ調整が起こりやすい」と話す。

<下げ渋る日本株>

ただ、これまで過敏といえるほど米株との連動性が高かった日本株には、独自の底堅さも見え始めている。

日経平均は9日の市場で一時92円安まで下げ幅を縮小。終値は180円安(0.95%)となったが、米雇用統計を受けて283ドル安(1.54%)となった前週末の米ダウと比べ下落率は小さかった。「かつて海外要因であろうと、海外株よりも日本株の下落率が大きかった時代とは、様変わりな印象を受ける」(国内証券)という。

理由の1つは日本株の先高観だろう。「絶好の押し目。米株は急落したが、日本株への不安は聞かれない」(大手証券トレーディング担当者)という。

日本の2014年10─12月期国内総生産(GDP)2次速報は市場予想を下回ったが、2月の景気ウォッチャー調査では、景気の現状判断DIが50.1となり、景気判断の分かれ目となる50の水準を7カ月ぶりに上回った。

「今期の企業業績の増益分はほぼ株価に織り込まれたが、来期の分はこれから。株価が下がれば、押し目のチャンスが来たと受け止められそうだ」とSMBCフレンド証券・チーフストラテジストの松野利彦氏)と、市場では強気ムードがまだ色濃く残っている。

2つめの要因は、日銀のETF買いや公的年金の株買いへの期待が大きいことだ。2月の上昇相場でも買い続けた信託銀行経由の国内年金は、押し目買いに徹するイメージに変わりつつあるが「押せば買うとの恐怖感が、ショートを仕掛けにくくしている」(別の国内証券トレーダー)という。

<円安には功罪>

日本株の底堅さの3つ目の要因は、円安が進んだことだが、こちらは今後も日本株の下支え要因とするには、やや微妙な状況だ。

今回は対ドルでは円安が進んだとはいえ、対ユーロや対豪ドルなどクロス円では円高が進んだ。日銀の追加緩和期待の後退や、貿易赤字縮小など円売り材料が以前より少なくなっているためだ。1ドル120円を超える円安には、日本国内でも賛否両論がある。

「円安材料は乏しくなった。欧州の量的緩和も始まり、相対的に円安のスピードは減速せざるを得ないだろう」とFXプライムbyGMO常務取締役の上田眞理人氏はみる。

ただ、いまの日本株にとって、一段の円安は必ずしもプラス材料ではない。円安進行はドル建て日本株を目減りさせることになるため、今後の買い主体として期待感が大きい海外長期投資家の買いを鈍らせかねないからだ。

円高にも円安にも大きく振れずに、このまま120円前後の水準を維持するという、やや都合のいい展開が続くかどうか、そこが日本株の先行きを左右する今後の焦点となりそうだ。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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