物価目標の早期達成、引き続き最重要=黒田日銀総裁

2015年2月26日(木)18時17分

[東京 26日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は26日午後の参院財政金融委員会で開かれた日銀半期報告で、できるだけ早期に2%の物価目標を達成するのが最重要課題との姿勢に変わりがないことを強調した。

同時に原油価格が上昇しなければ2015年度をめどとしている目標達成時期が遅れる点も指摘し、必要ならば追加緩和も辞さない姿勢をあらためて示唆した。

政府は1月に月例経済報告で2%の物価目標達成に関する表現を「できるだけ早期に」から「経済・物価情勢を踏まえつつ」に変更しており、甘利明経済再生担当相も日銀の目標達成時期について、当初予定の2年よりも余裕を持ってよいと発言。政府から日銀への追加緩和圧力が弱まったとの見方が増えている。このため無所属クラブの中西健治委員が、日銀は今もできるだけ早期の物価目標達成が最重要課題かと質問、黒田総裁は「その通り」と答えた。

<原油急落、消費低迷、輸出回復遅れ「想定外」>

安倍政権発足直後の2013年1月に政府・日銀が発表した共同声明では、日銀による2%目標の早期達成と、政府による機動的な財政運営と成長戦略の実施をうたっている点を総裁は指摘し、「共同声明は活きている」と強調した。

黒田総裁は、複数の委員から13年4月の量的・質的緩和(QQE)開始時の想定と異なった点を問われ、「原油価格の急落と、消費税引き上げ後の消費低迷と、円安にもかかわらず輸出が伸びなかった点」を挙げた。「昨年夏以降の大幅な原油下落は想定していなかった」ため、消費者物価指数(CPI)の上昇率は「当面さらに低下する」と述べた

<2年程度は2年程度、ピンポイントでない>

物価目標の達成時期について、原油が「現状から緩やかに上昇するなら、2015年度を中心に2%の物価目標に達する可能性が高い」との公式見解を繰り返し、「原油価格動向で達成時期が前後するのに留意が必要」、「原油価格が下がり続けなければ、今の政策で十分」などと指摘した。

黒田総裁は2013年4月に現在の量的・質的緩和(QQE)を打ち出した際に「2年程度で2%の達成」を掲げており、再来月が本来の達成期限となるはずだが、日銀は緩やかに達成時期を後ずれさせている。黒田総裁は「2年程度は2年程度で、(達成時期を)ピンポイントに決めたわけでない」と解説した。また「2016年度末までには当然2%に達している」と指摘した。

金融緩和から引き締めへの出口戦略については「現時点で発言するのは時期尚早」との従来答弁を繰り返したが、先に利上げを行い、資産売却は後回しにする米国の手法は「参考になる」と述べた。

政府・日銀の共同声明について「日銀は声明に沿って政策運営している」とし、政府に関しても「共同声明に沿って財政・成長戦略を行っていると理解している」と述べた。「日本は債務残高が大きく、国全体として財政運営の信認確保が重要」と、あらためて財政再建の重要性を繰り返した。

金融緩和の為替への影響について「他の条件が一定なら円安方向に作用する」が、「他の条件は一定でないため、金融緩和と為替に一定の関係が常に成り立っているわけでない」と述べた。

金融緩和の副作用については「現時点で期待の強気化は起きていないが、バブルの懸念がないか常に慎重に見極めている」とした。

<共産・大門氏がサプライズ緩和の副作用を指摘、総裁「趣旨は理解」>

共産党の大門実紀史委員が、昨年10月の追加緩和前後に景気認識が急変した経緯を追及し、総裁は「政策委員会は合議性なので金融政策決定会合を先取りした発言は適切でない」と説明した。

日銀は昨年10月31日、大方の市場関係者が予想していなかった追加緩和に踏み切った。黒田総裁は3日前の28日に、経済・物価が2%の目標達成に向けて順調に進んでいると参院で答弁しており、大門委員はわずか3日での急変の経緯を質問。政策の見通しを市場に織り込ませないサプライズ狙いを続けると、日銀が重要な発信を行った場合に誰も信用しないリスクがあると指摘した。これに対して黒田委員は「趣旨はよく理解した」と答えた。

10月の追加緩和は、9人の審議委員のうち4人が反対に回る薄氷の採決だった点でも異例だったが、総裁は「相当いろいろな議論があり、かなり激しい議論を戦わせた」と振り返った。また「好転する期待転換モメンタムの維持が狙い。デフレマインドの払しょくが遅延するリスクに対して未然(プリエンプティブ)に対応した」と説明した。

(竹本能文、中川泉)

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