世界株高に潜むリスク、景気減速の中国に「負の連鎖」も

2015年2月26日(木)17時16分

[東京 26日 ロイター] - 原油安やギリシャ問題が一服し、世界同時株高の様相を示しているが、リスク要因がすべて消えたわけではない。くすぶる懸念の1つが中国だ。成長率の減速自体は織り込まれつつあるが、税収が減少すれば地方政府の債務問題が再燃しかねない。銀行の不良債権増につながり、貸し渋りから景気がさらに悪化する「負の連鎖」の発生が警戒されている。

<急増する債務>

中国をめぐる懸念は経済から政治まで様々だが、市場の一部で今、関心が高まっているのは、地方政府の債務問題だ。

やや古いデータだが、中国の会計検査院にあたる中央審計署(審計署)が2013年12月に発表した13年6月時点の地方政府の債務残高は約17兆9000億元(日本円で約340兆円)と、2010年末の約10兆7000億元から67%増加した。

地方政府の債務は、中国経済に対する最大のリスクの1つだ。大半が利益にならない公的インフラ整備のための借り入れであるため、かなりの部分が返済不可能であり、足元ではさらに増加している可能性が大きい。

「新常態」と呼ばれる中成長時代に向けて、着々と改革は進んでいるものの、改革を進めるために成長率を落とし過ぎては、地方政府がパンクする。「7%程度までの成長率低下は市場も織り込み始めている」(楽天経済研究所シニア・マーケットアナリストの土信田雅之氏)とはいえ、成長率の鈍化は地方政府の税収を減少させ、地方政府の債務返済能力を低下させかねない。

<金融不安につながる懸念>

中国における地方政府の債務問題が怖いのは、金融システム不安に発展しかねないからだ。リーマン・ショック後の景気刺激策を背景に、地方政府や製造業、不動産などに、銀行は融資を膨らませた。

中国銀行業監督管理委員会(銀監会)の公表資料によると、2014年12月末時点の銀行の不良債権比率は1.64%。9月末時点の1.16%から上昇したが、依然として低い水準だ。銀行の自己資本比率は11月末時点で12.9%あり、健全性は数字上、担保されている。

しかし、じわりと不良債権比率は上昇しており、リーマン・ショック以降、約5年ぶりの高水準となっている。地方政府への融資が焦げ付けば、不良債権の増加、貸し渋り、景気の一段悪化という悪循環に陥りかねない。

SMBC日興証券・金融経済調査部シニアエコノミストの肖敏捷氏も「短期的な中国の最大のリスクは、地方政府の債務問題。改革を進めたい中央政府と成長を維持したい地方政府の対立構造があり、コントロールは容易ではない」と述べる。

<イエレン議長も中国を警戒>

米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長が、24日に行った議会証言。中国について、経済成長は予想以上に減速する可能性があると指摘し、市場で注目されている。米連邦公開市場委員会(FOMC)が金融政策の評価材料として「金融情勢」に加え、「国際情勢」も重視するとの新たな姿勢を打ち出していたためだ。

イエレン議長は、政策担当者が金融的なぜい弱性に対応したり、成長の源泉として輸出や投資への依存を減らすという望ましい移行を行う中で、景気減速は起きうるとしている。政策目的としては評価できるものの、経済成長の予想以上の減速には警戒が必要と言うわけだ。

強気が広がるマーケットでは、中国の材料に対して神経質な反応はなくなってきている。「景気が減速しても、政策手段も残されており何とかなるだろう」(国内投信の運用部長)との楽観論があるためだ。

貿易収支やマネーサプライなど景気減速を示すネガティブな経済指標が出ても、リスクオフの動きは限定的でコマツなど関連株はほとんど下げなかった。

しかし、みんなが安心している場合こそ、リスクは発現した際に影響が大きくなる。楽観ムードが日々強くなるマーケットだけに警戒感もある。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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