アングル:中国の健康ブームで消費者嗜好に変化、欧米勢は戦略見直し

2015年2月26日(木)14時13分

[ロンドン/上海 25日 ロイター] - 中国では健康意識が急速に高まっているが、そうした健康志向が欧米の食品大手には逆風となっており、戦略見直しを迫られる企業も出てきた。

手軽な食品を求める中国の中間層からの需要で販売が急拡大したスイス食品大手のネスレ、フランスのダノン、米ペプシコ、米ゼネラル・ミルズが現在、その影響に直面している。添加物が少なく、健康をより意識した食品への需要が高まっているものの、こうした食品はコストがかさむ可能性がある。

中国でこれほど急速、かつ根本的に消費者の嗜好(しこう)が変化したことはなく、ネスレのポール・ブルケ最高経営責任者(CEO)は中国のトレンドに「乗り遅れた」と認め、再び商機をつかむための計画を練っていることを明らかにした。

ネスレは、添加物や代替原料を抑えた商品を好む消費者向けに、銀鷺のピーナッツミルクブランドを刷新するなどして対応を検討している。

ネスレの国別業績は公表されていないが、スイスの銀行ボントベルのアナリスト推計では、昨年の中国の増収率はわずか0.7%。銀鷺や徐福記といった事業の不振を、コーヒー事業ネスプレッソでカバーした。

競合の英蘭系日用品大手ユニリーバは昨年後半の2四半期で、中国の売り上げが20%減少。卸売りと小売り業者がともに在庫を減らした。

<食の安全>

食の安全を脅かした一連の問題で、中国の消費者が材料に敏感になっているという事情もある。特に、2008年に有害物質が混入した粉ミルクを飲んだ乳幼児の少なくとも6人が死亡した事件は波紋を広げた。

2013年には、ニュージーランドの乳業大手、フォンテラが粉ミルクなどに汚染物質が含まれている可能性を警告し、粉ミルクの売り上げが急速に落ち込んだ。

ダノンは先週、中国で乳児用粉ミルクの需要が改善していると明らかにしたが、主力のデュメックスブランドではなく、ニュートリロンのようなオンラインで販売されるプレミアム商品が好調だったという。

食の安全は常に懸案事項だが、今では消費者が栄養を気遣うようにもなってきているといい、中国国内のブランドは多国籍の競合他社に対抗するために、そうした点を売り込んでいる。

食品・飲料メーカーの康師傳 は、自然素材と手作りのイメージを強調する。また、飲料メーカーの加多宝は、漢方薬入りのお茶を販売しており、体内の熱を冷ますというのが宣伝文句だ。

調査会社ニールセンのデータによると、中国では昨年第3・四半期までに健康関連食品の売り上げが15%増加した。市場全体では伸び率はわずか5%だった。ニールセンの中国部門の幹部は、健康を意識した食品への支出が今後も増えるとの見方を示している。

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