「円安離れ」する日本株、ドル建て日経平均が14年半ぶり高値

2015年2月25日(水)16時45分

[東京 25日 ロイター] - 日本株が「円安離れ」を見せている。円安が進まない中で株価が上昇するという、これまでのアベノミクス相場とは異なる展開だ。ドル建て日経平均は14年半ぶりの高値水準を回復。海外投資家の注目度がさらに高まると期待されている。

ただ、株価のベースとなる企業業績が円安進行なしでも増益を続けられるのか、不透明感も根強い。世界的な金融緩和を背景とした上げ相場の先行きに、警戒感を示す声も少なくない。

<ドル/円と日本株が逆行>

24日のイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言は、ややハト派的との受け止め方がコンセンサスになりつつあり、為替市場の反応はドル安・円高となっている。その下で、日本株は高値を更新した。円高といっても、119円付近から118円後半に下がっただけとも言えるが、以前のような円安連動型の日本株の動きは見られない。

実際、ドル建てベースの日経平均は、25日の市場で一時157ドル台に上昇。約14年半ぶりの高値水準に乗せてきた。これまでは株価が上昇しても円安分で相殺され、なかなかボックス圏を抜け切れなかったが、日本株が「円安離れ」を見せていることで、3度跳ね返された節目をついに突破してきた。

市場では「日本の投資家が円建てダウ平均をさほど見ないように、海外のファンドマネジャーの多くも、ドル建て日経平均を常に見ているわけではない。基本は現地通貨建てだ」(外資系投信)との指摘もある。とはいえ、ドル建て日経平均の上昇によって、海外勢の換金時のキャッシュフローが増えることも確かだ。

「日本株売却後すぐにキャッシュ化したいとする海外投資家は増えている」(大手証券トレーダー)という。ドル建て、円建てともに日経平均が歴史的な節目を突破し、「アベノミクス相場」の第2幕に入ろうとしていることで、外国人投資家の買いが再び増えるのではないかとの見方も出てきている。

<海外投資家の関心も高まる>

実際、海外投資家の日本株を見る視線も熱くなってきた。「欧州の量的緩和や原油安の話題が一巡し、ようやく日本についての質問が増えてきた。説明に対する反論も少なく、買い材料を探している感じだ」と外資系証券のエコノミストは話す。

ドル建てに先行し、円建てはすでに上値追いの様相だ。日経平均は25日の市場でも高値を更新。14年10カ月ぶりの高値となる1万8648円を一時付けた。「一服感もあり、海外勢の買いは止まっているが、売りが出ないので底堅い」(国内証券)という。

果たして、このまま日本株は円安の「助け」を借りずに上昇し続けられるのか──。

ソシエテ・ジェネラル証券東京支店・チーフエコノミストの会田卓司氏は、総賃金拡大と低金利環境の2つの車輪が動き出しており、これ以上の円安なしでも、日本経済は成長し続けられると指摘。「消費再増税は延期され、インバウンド消費も好調だ。GDP(国内総生産)はプラス成長に戻った。デフレの入り口だった1996年終わりごろの日経平均は2万円付近だった。デフレから脱却しつつある今、2万円回復が視界に入ってきた」とみる。

<先行きは依然不透明>

現在の日経平均のPER(株価収益率)16.75倍をベースにすれば、2015年3月期の1株利益がこのまま伸びないとしても、来期の16年3月期に7.5%増益を確保するとみれば、2万円は正当化される。

むしろ円安はこの辺で止まってくれた方がいいとの見方もある。「これ以上の円安にはデメリットも大きくなる。1ドル120円付近であれば、海外拠点の国内回帰を促す水準であり、内需拡大が期待できる。内需系株が好調なのはそのためだろう」とアムンディ・ジャパン投資情報部長の濱崎優氏は話す。

ただ、その先も見据えるなら、円安なしで増益基調を維持できるのか、まだ不透明だ。さらに損益分岐点が低下している日本企業の抵抗力は増しているとはいえ、海外情勢の不安定化や、新興国経済の悪化などでリスクオフによる円高が進む可能性もある。そのケースでは、海外投資家が主体の日本株高だけに、ポジション巻き戻しの影響が大きくなるおそれもある。

イエレンFRB議長の議会証言は、米利上げ時期に関して言質を与えなかったが、利上げが徐々に近づいてきていることは確かだ。そのときにマーケットがどのような動きとなるか想定は難しい。日本株が高値を更新する一方で、日経平均先物で1万5000円や1万6000円のプットが静かに買われているのは、そのリスクに備えてのヘッジだとみられている。

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