焦点:VIP客減少で冷え込むマカオ、中国が海外送金の規制強化

2015年2月20日(金)17時13分

[マカオ/珠海(中国) 19日 ロイター] - 中国政府の汚職や浪費に対する取り締まり強化で、世界最大級のカジノ拠点・マカオの娯楽産業に影響が出ている。ハイローラーと呼ばれる大金を落としてくれるVIP客が遠のいているためだ。

最近マカオの4つのカジノを訪問したところ、VIPルームはほとんどが閑散としており、一部は板が打ち付けられ閉鎖されているところもあった。カジノテーブルは板と白い布で覆われていた。

政府の厳しい通貨管理を避けようとする観光客が利用していた近隣の質屋や宝飾店、国境付近の珠海にある海外送金所は人影もまばらだ。

昨年2月、マカオの35カ所のカジノ運営会社は興隆を極めていた。売上高は前年比40%急増していた。1年後の今月は同40%急減する見通し。前月比での減少は8カ月連続だ。

春節(旧正月)で観光客が増加するこの時期も、減少傾向は続くとみられる。

マカオには「ジャンケット・オペレーター」と呼ばれる、ハイローラーへの融資・集金を手掛ける中間業者が100社以上存在する。これに携わるジョニー・フォック氏は、「非常に危険な時期だ」と話す。「習近平国家主席は、マカオに観光客を来させず、ギャンブルもさせまいとしているようだ。元通りになるには、習氏の任期が切れるまで7年待たなければならないかもしれない」と嘆く。

汚職調査を担当する中央規律検査委員会(CCDI)は、マカオでの監督を強化中。フォック氏の事業は過去2カ月に前年比70%縮小。ジャンケット・オペレーター上位10社のうち3社が、この3カ月間でVIPルームを閉鎖した。今後も同様の動きが続く見込みだ。

マカオカジノ業者の団体、「澳門賭業前線」の責任者であるLei Kuok Keong氏は「中国政府は今後3カ月はマカオの取り締まりを続けるだろう」との見方を示し、「VIPに関しては事はより深刻だ。さらに多くのVIPルームが閉鎖になるだろう」と話した。

Lei氏によると、中国本土からジャンケットを通じて電話でギャンブルに参加したりする客も減少したという。

<マスマーケット(大衆市場)への希望>

国境付近の珠海にある地下街。マカオと海外との入出金を扱う業者らによると、銀行は「銀聯(ユニオンペイ)」カードなどを利用した大規模な取引に対する監視を強化している。現在、10万香港ドル(1万2892米ドル)を超える金額の取引は身元確認が義務付けられており、匿名での入出金を求める観光客から敬遠される結果となっている。

古いポルトガル風カジノの周囲にある4軒の店は閉まっていたが、大半の質屋や時計店は依然として違法な現金引き出しサービスを提供しており、偽物の宝飾品をカードで購入した客に現金を手渡していた。

ベネチア風カジノにある宝飾店の店主は、銀聯カードを利用した上限を超える額の取引には、取り締まりをかいくぐるため取引を分割して金額を小さくする方法が使われていると説明。「3日前には、カードで100万香港ドル分を利用していった人がいた」と話した。

カジノフロアの向こう側の電光掲示板には、カジノカウンターでの本土銀行が発行したクレジットカードやデビットカードによるチップ購入は不可、と表示されている。

一般の観光客らは引き続きマカオを訪れており、カジノ運営業者らは「ハイローラー」の減少分を穴埋めしてくれるよう願っている。だが、VIP相手のビジネスは売上全体の60―70%を占めているだけに、埋めるべき穴は大きい。

ほかにも「穴」はある。大手のギャラクシー・エンターテインメント・グループ(銀河娯楽集団)とメルコ・クラウンが今年、マカオ南部の2島をつないだ埋め立て地であるコタイストリップに2つのカジノを新設するのだ。

コタイの開発はカジノの売上が鈍化するずっと以前から計画されていたもので、他の施設も建設中。ラスベガス・サンズのパリ風リゾート施設には2分の1サイズのエッフェル塔のレプリカがそびえ、ウィン・リゾーツのカジノの前には湖が作られゴンドラが浮かぶ手はずになっている。

クレディ・スイスのアナリスト、ケネス・フォン氏は、マスマーケットの観光客がVIPの減少分を補完するとの期待に対しては冷ややかで、「彼らが使うお金は少ない。電気代にもならないだろう」と一笑に付した。

(Farah Master記者、James Pomfret記者 翻訳:田頭淳子 編集:加藤京子)

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