アングル:海外勢主導の株高、日経平均1万8500円突破が焦点に

2015年2月19日(木)14時53分

[東京 19日 ロイター] - 19日の東京株式市場で日経平均は一時1万8322円まで上昇し、14年9カ月ぶりの高値水準に達した。株高を主導したのは海外勢だった。米株高や円安に依存しない株価上昇は東京市場では見慣れない景色だ。

日本経済の回復を見越した資金が流入しているとみられるが、内需期待の株高には限界があるとの見方もある。注目されるのは日経平均が1万8500円のカベを突破できるかどうかだ。

<売り注文が瞬時に消滅>

日経平均が歴史的な節目を超えた19日、株式市場で注目されたのは三菱UFJ、三井住友FGなどメガバンク株の活況ぶりだった。売買注文の指値に幅を持たせる「計らい注文」が増えているとの指摘があり、「前日から大口の売り注文が一瞬で買われるような状況になっている」(国内証券)という。市場関係者の見方で一致しているのは海外投資家の買いだ。このところ東証1部の業種別値上がり上位には銀行、証券、食品、サービスなど内需系のセクターが目立つ。主力輸出株と比べた出遅れ感もあり、大口買いで組み入れ比率を修正する動きとみられている。

「海外勢は欧州、中国への投資が一巡し、昨年は関心を示さなかった日本株に見直し買いを入れている。背景には、春闘を通じた賃上げ期待や貿易収支の改善など、国内経済の明るい兆しがある」(野村証券エクイティ・マーケットアナリストの佐藤雅彦氏)。今春闘では自動車、電機大手が昨年実績を上回るベースアップに踏み切る見通しと報じられている。デフレ脱却に向けて賃上げは不可欠であることから政府の要請も強い。

貿易収支の改善も企業業績の拡大をもたらし、賃金上昇につながる要因だ。SMBC日興証券チーフエコノミストの牧野潤一氏は「15年度の実質所得は名目賃金の上昇と物価の下落から前年比2%台の伸びが期待できる。14年度の1%減からの変化率は3%となり個人消費を押し上げる効果が見込める」と話す。

<国内の三本柱は健在>

トップダウン型の海外投資家は、消費増税後の日本経済の落ち込みを嫌気して日本株投資を見送ってきたが、ここにきて変化の兆しを敏感にとらえているようだ。今年は原油安のメリットが見込めるうえ、10月に予定されていた消費再増税も先送りとなり、投資しやすい環境になる。

もともと需給面は悪くない。市場では「バイアンドホールドを基本とする日銀、GPIF、自社株買いの三本柱が存在する限り相場は崩れない」(東海東京調査センターマーケットアナリストの鈴木誠一氏)とみられている。

<ドル建て日経平均156ドルが抵抗線>

日経平均は2007年2月26日の高値1万8300円39銭を抜き、チャート上はITバブル期の2000年4月に付けた2万0800円台まで上値余地が広がる形だが、死角がないわけではない。海外投資家が利用するドル建て日経平均156ドルの壁だ。2006年5月と2013年5月には156ドルで天井を形成。2014年1月も155ドルで上昇が止まった。8年以上にわたり156ドルが抵抗線として機能している。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニア投資ストラテジストの折見世記氏は「内需頼みの株高は心もとない。日本株は世界の景気敏感株であり、OECD景気先行指数との連動性が極めて高い。世界景気が勢いを取り戻していない中では日本株の上昇にも限界がある。1万8500円付近が天井になる可能性もある」と指摘する。

円相場1ドル118円60銭(19日午後1時半現在)を前提にすると、日経平均のドル建て156ドルは1万8500円に相当する。ここに円建てチャートでは見えない壁が存在する。逆に同水準を明確に上回れば、「持たざるリスク」による海外勢の買いが本格化する可能性もあり、当面の攻防の分岐点として意識されそうだ。

(河口浩一)

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