焦点:完全雇用の水準めぐる議論、米利上げペース鈍化を示唆

2015年2月12日(木)21時04分

[サンフランシスコ/ワシントン 11日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)当局者の間で最近頻繁に議論されている「完全雇用の目標水準」の修正によって、利上げ開始後の引き締めペースは現在予想されているよりも緩やかになる可能性がある。

FRBの現職および元当局者・スタッフ数人へのインタビューによると、完全雇用の状態と見なされる、インフレ圧力が生じ始める「自然失業率」はかなり低いとの見方が内部で定着しつつある。

こうした見方の変化は、年央と予想されている利上げ開始時期を遅らせることはなさそうだが、FRBが雇用拡大とインフレ目標の達成に向け、その後の引き締めペースを緩める妥当な理由となるだろう。

昨年12月時点のFRB当局者の見通しによると、政策金利は現在の0─0.25%から2016年末までに2.5%、あるいはそれ以上に上昇するとの見方が大勢。

また11日に発表されたロイター調査では、利上げ開始は6月との見方が強まった。

FRBのパウエル理事は9日、自然失業率が低くなっている可能性についてFRB内で議論しているとし、5%を下回っているとの見方もあると指摘。そうであれば、インフレ率が加速し始める前にさらに雇用状況を改善させる必要がある、との考えを示した。

5%という水準は、現在の米失業率5.7%やFRB当局者が完全雇用と見なす5.2─5.5%を下回る。

<目標はさらに低い水準に>

アトランタ地区連銀のロックハート総裁は6日、インフレ率を目標に向けて押し上げるため、失業率を異例の低水準に押し下げるべきかどうか判断する必要が生じた際、完全雇用の真の水準が議論の焦点になるとし、「これまでわれわれが指摘してきたよりも低い水準を目標にする考えに対して私はかなりオープンだ」と述べた。

ボストン地区連銀とミネアポリス地区連銀の総裁らも完全雇用に関する予測の下方修正を検討しているという。

FRBは完全雇用について物価安定と一致する失業率とし、正式な目標は持たないが、雇用の最大化と2%のインフレ目標達成を目指す責務を踏まえると、自然失業率を正確に評価することが重要となる。

FRBの主な経済モデルの一部として四半期ごとに公表されているデータによると、1960年代以降、自然失業率は平均6.3%と見なされてきた。

しかし、2013年から2014年終盤までにはFRBスタッフが5.6%から5%に引き下げており、来月発表される四半期データでは当局者らが予想を引き下げる可能性がある。

複数の連銀調査によると、予想は4.7%まで低下している。

<一部の当局者は予想据え置き>

ただ、すべてのFRB当局者が見解をシフトさせている訳ではない。クリーブランド地区連銀のメスター総裁は先週、自然失業率について5.5%との見方を維持する姿勢を示した。

政策当局者らはリセッション(景気後退)からの脱却時には企業が求める人材に長期失業者が見合わない状況が増えることを踏まえ、自然失業率の予想を引き上げてきた。

しかし、失業率は低下しても賃金や物価に上昇の兆しはなく、当局者は予想の引き下げに転じた。

イエレン議長とほぼ同じ政策スタンスを持つサンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁は2年前の約6%から5.2%に引き下げている。

ただ同総裁も、これまでの調査で自然失業率の予想は不透明なため、政策判断の際にこの予想に過度に依存するべきでないと警告している。

(Ann Saphir記者、Howard Schneider記者 翻訳:佐藤久仁子 編集:加藤京子)

*見出しの文言を一部修正しました

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