量的・質的緩和出口、市場の価格発見機能回復が課題に=日銀委員

2015年2月12日(木)00時24分

[東京 11日 ロイター] - 日銀の佐藤健裕審議委員は11日、ロンドンで行われた日本証券業協会主催のイベントで講演し、日銀による大規模な国債買い入れを柱とした量的・質的金融緩和(QQE)が出口を迎える場合、市場の価格発見機能の円滑な回復が課題になる、との認識を示した。

日銀が同日、ホームページで要旨を公表した。

佐藤委員は、昨年10月末の追加金融緩和によって、QQEが金利形成に与える影響は「一段と顕著になっている」と指摘。国債市場における中期ゾーンでのマイナス金利発生や、イールドカーブの平たん化が進んだが、最近では「金利のボラティリティの高まりがみられる」と語った。

そのうえで、こうした金利形成が「政策効果として、さまざまな資産価格や投資家の資産配分におよぼす影響を注視している」と述べる一方、「金融システムの安定性や市場機能などに影響をもたらさないかどうか、副作用も注視している」と発言。国債の市中発行額の約9割を日銀が買い入れていることを踏まえ、「やや長い目でみて、量的・質的金融緩和が出口を迎える際には、市場の価格発見機能の円滑な回復が課題となろう」との認識を示した。

日銀が掲げる2%の物価安定目標の評価にあたっては、特定の物価指標に着目せずに「企業や家計など人々の行動様式が、ある程度の物価上昇を前提としたものに変化していくかが重要」と述べた。

特に基本給は上がらないという「人々のデフレ下の固定観念」に風穴があけば、「中長期的な予想物価上昇率に好影響がおよぶ可能性がある」と期待感を示した。

また、QQEの成功には、財政の信認確保が不可欠と指摘。日銀による大規模な国債買い入れは「財政ファイナンスではない」とあらためて強調し、政府の財政健全化努力に対して市場が疑念を持てば「リスクプレミアムの拡大から量的・質的金融緩和の効果が損なわれるリスクがある。リスクプレミアムがいったん拡大すれば制御は困難」と財政再建の重要性を訴えた。

佐藤委員は、最近の原油価格の下落を受け、日銀を含めた主要国の中央銀行は「インフレ率の低下が中長期的な予想物価上昇率に影響し、それがインフレ率の一段の低下をもたらすフィードバックループに陥るのではないかという問題を共通に抱えている」と主張。日銀の昨年10月末の追加緩和は、そうした懸念への対応が理由と説明した。

(伊藤純夫)

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