副大統領選びはむずかしい
アメリカ大統領選挙で候補者になるためには、まずは民主党か共和党の党員たちに認めてもらい、党の候補になる必要があります。民主党なら、リベラルであればあるほど党内の支持が高くなりますが、本番の選挙では、リベラルすぎると敬遠されます。
同じように共和党では、強硬な保守が支持されますが、本番では一般の有権者から嫌われます。
これを避けるため、党の候補に決まったとたん、候補者は発言内容を軌道修正し、中道寄りになるケースが多いものです。民主党のクリントンは、大統領候補になると、保守的な発言が多くなりました。共和党のブッシュ(息子)は、正式な候補になると、「穏健な保守主義」を掲げました。実際には、「穏健」どころか、とんでもないタカ派の本性を隠していたのですが。
では、今回の共和党のロムニー候補は、どうか。共和党の候補者選びの過程で、各候補とも極端な保守強硬路線を打ち出していたため、本選では中道路線に寄るのかと私は思っていたのですが・・・、結果は、極端に保守強硬派のポール・ライアン下院議員を副大統領候補に指名しました。
「これはいわば極右のクーデターだ」
こう指摘するのは、本誌日本版8月29日号の記事「ライアンを相棒にしたロムニーの大誤算」を書いた政治評論家のピーター・バイナートです。「健全な政党なら党と国のイデオロギー的傾向の溝を自覚し、候補に橋渡しの余地を与える」はずなのに、共和党はそうしなかったというのです。共和党は「健全な政党」ではないと言いたいのですね。
「言い換えれば、ロムニーは保守派基盤の支持強化のため、ひどく評判の悪い意見の持ち主を副大統領候補に選んだわけだ」。
とまあ、評価は散々です。さらに同誌の別の記事「ライアンは副大統領の器か」でも、ライアンに対する評価は最悪です。
『ニューズウィーク』は民主党寄り。どうしてもそんな印象が強くなりますが、それを打ち消す特大の特集も同誌には掲載されました。それが『「無能」オバマに再選の資格なし』と題した本誌コラムニストのニーアル・ファーガソンが書いた特集記事でした。
ファーガソンは、自分の立場をこう書いています。4年前に彼は「共和党候補ジョン・マケインの選対顧問だった」そうです。
彼はオバマの4年間をコテンパンに批判し、特集記事をこう結んでいます。
「4年前、私は負けを認めた。だがライアンの登場で希望を取り戻した今、11月には何としても勝ちたいと思っている」。
共和党のライアンを叩いたり、希望だと述べたり。いろいろな意見を読めるのが本誌の良さですが、今号のオバマ叩きは、本誌アメリカ版編集部が、「民主党寄り」のイメージを払拭したいとの意図を持っているのが透けて見えます。
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