新聞記事の意外な続報を知る
今年5月、アフガニスタンの女子校で女生徒が集団で倒れた。女子が学校で教育を受けることに反対しているタリバンが、毒を盛ったらしい......。
こんな記事を新聞の国際面で見つけました。小さな記事ながら、「うーん、タリバンならやりかねない。なんということだ」との感想を持ったものです。
ところが、真相はそうではなかったらしいというのが、本誌日本版8月8日号の記事『少女集団中毒の不可解な結末』でした。
事件が起きたのは5月23日。アフガニスタン北部の公立女子校で、全校生徒約1200人のうち127人が卒倒したり、めまいや不安を訴えたりして病院に搬送されたというのです。「大半は数時間で回復し、自宅に戻ったが、毒物による症状と診断された」。
その後も事件は続き、4~6月で周辺地域の7校の女子生徒1000人以上が同じ症状を訴えました。
6月6日、アフガニスタンの国家保安局が容疑者15人を逮捕。この中に地元の女子校生2人も含まれていました。逮捕された女子校生がタリバンに脅されて毒物を使うように強制されたと自供するビデオテープも公開されました。
ところが、国連やWHO(世界保健機関)が調べても、毒物の痕跡が見つかりません。学校内にいた男性は誰も症状を起こしておらず、被害を訴えたのは、ほとんどが若い女性でした。研究者たちは、一連の症状を「集団心因性疾患」と推測しているというのです。
これを別の言葉にすれば、「集団ヒステリー」です。今年1月にはアメリカでチアリーダーが一斉にけいれんを起こしたことがあり、これも同じ原因だということです。
しかし、いったん「タリバンが毒物を使った」との風評が広がれば、治安当局は成果を上げなければなりません。それが、拷問によって得られた女子校生の供述というわけです。
タリバンなど関係なかったのです。でも、当局にはタリバンの犯行としておいたほうが都合がいいようです。タリバンの「下っ端の戦闘員には録画の自白を信じ、タリバンに幻滅する者もいる」からです。
治安当局にとっては、きちんと捜査をしているという実績が残り、タリバンが勢力を弱める。一石二鳥です。
タリバンの攻撃に脅える日々の中で、若い女性たちにのしかかっているストレスがどれほどのものか。アフガニスタンの現状を浮き彫りにする優れた記事でした。新聞の短信のその後を調べると、思わぬ事実が発掘される。これは、その典型的なリポートです。
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