「パチンコ税」を創設し、ギャンブルを合法化せよ
自民党などが提出したカジノ法案は通常国会では成立が見送りになったが、新たに「パチンコ税」が浮上しているようだ。法人税率を下げる財源として、財務省はかねてからパチンコなどのギャンブルへの課税を検討しているが、自民党の「時代に適した風営法を求める議員連盟」(保岡興治会長)がパチンコ税の勉強会を開くなど、有力議員にも賛同者が出てきた。
パチンコの産業規模は、2012年で約19兆円(日本生産性本部調べ)。通信業界とほぼ同じ巨大産業である。これに1%課税するだけで、1900億円の税収が上がる。今はパチンコは「遊戯」ということになっているが、それがギャンブルであることは公然の秘密だ。東京では「T.U.C.」という看板の店にパチンコ屋の景品をもっていくと、換金してくれる。
建て前上は、パチンコ屋は客に玉を貸しているだけで、石鹸などの「特殊景品」を買い取るのは景品交換所だが、彼らは景品を景品問屋に売る。問屋は景品をパチンコ屋に卸す「三店方式」をとっている。刑法185条では「賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」と規定されているので、客がパチンコ屋から現金を受け取ると違法だが、景品をもらうのはゲームセンターと同じで合法だ――という解釈になっている。
しかしそんな建て前を信じている客はいない。特殊景品をもらうのは換金するためであり、パチンコは競輪・競馬と同じギャンブルである。このように法の抜け穴をくぐる行為を脱法行為と呼ぶ。これは警察が摘発しないから営業できるだけで、警察がその気になれば摘発できる。たとえばパチンコ屋が景品交換所から直接景品を買い取ると、摘発される。
だからパチンコ屋も景品交換所も問屋も、警察には絶対服従だ。担当の警察官を接待したり、警察OBが業界団体やメーカーに天下りしたりする「パチンコ利権」は大きい。たとえば2002年に前田健治元警視総監は、大手パチスロ機メーカーの常勤顧問に就任した。特に問題が大きいのは、パチンコ業界が北朝鮮や暴力団の資金源になっていることだ。警察がそれを見逃す代わりに天下りしているとすれば、パチンコ業界だけの問題ではない。
賭け事を禁止するのはピューリタンの倫理で、日本の伝統ではない。日本で賭博を禁止したのは明治以降だが、それで博打がなくなったわけではない。今でもパチンコや麻雀や賭けゴルフなどのギャンブルは広く行なわれており、暴力団の資金源になっている実態も変わらない。ギャンブルがよくないのは、売春と同じく非合法化されるために「地下経済」の資金源になるからだ。
「ギャンブルを合法化すると子供の教育によくない」という人もいるが、競輪・競馬が合法なのに、なぜパチンコやカジノが違法なのか、説明できる親がいるだろうか。ギャンブルは生活を破壊するというが、競馬で人生が破壊された人も多い。バチンコだけを禁止しても、ギャンブル依存症はなおらない。競馬は自治体の収入になっているというのなら、パチンコもそうすればいい。競馬のように25%も課税すれば、合理的な人は賭けないだろう。
これを「換金免許制度」などの形にして店で換金を認める方式が検討されているようだが、免許に警察の裁量がきくと利権が温存される。すべてのギャンブルを一律に合法化して高率の税をかけ、公的に管理したほうがいい。競輪・競馬も民営化し、民間企業の参入を認めるべきだ。
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