アメリカでようやく根付き始めた日本のライトノベル

2018年6月22日(金)15時40分
渡辺由佳里

米大手書店チェーン、バーンズ・アンド・ノーブルのYAファンタジー/アドベンチャーの棚 Yukari Watanabe/Newsweek Japan

こういった難問を解決するために Yen On が決めたのが「北米ではライトノベルを漫画と同じカテゴリで販売する」という戦略だった。業界専門家向けの雑誌パブリッシャーズ・ウイークリーでのPRでも、Yen On はライトノベルを「日本で発展したフィクション形式で、漫画とアニメの熱心なファンにアピールすることを意図している。......極めて会話とキャラクター中心に進められるページターナー」と説明している。

「特に初期のライトノベルの多くが漫画化されたこともあり、漫画と並べて販売してもらうのは、読者が見つけやすいという点でも道理にかなうし、非常にうまくいっている」とハスラー氏は言う。

Yen On の現在のトップセラーは『OVERLORD(オーバーロード)』で『SWORD ART ONLINE(ソードアート・オンライン)』がそれに続く。この2作を含めたいくつかの人気ライトノベルの読者を Amazon と Goodreads でチェックしたところ、ほとんどが漫画やアニメのファンであり、通常のYAフィクションの読者とは重なっていなかった。

ライトノベルの普及に貢献しているのも、YAファンタジーのファンではなく、インターネットやソーシャルメディアで活動する日本のアニメ・漫画ファンだ。140万人の視聴者を持つユーチューバーの The Anime Man(Joey) 氏は、「ライトノベルの初心者向けガイド(The Beginner's Guide To Light Novels)」で、ライトノベルを「漫画と小説の中間」とわかりやすく説明している。

英語圏(住む場所というよりも言語における)の漫画・アニメファンが口コミで広めやすい環境が整った現在、ライトノベルはようやくアメリカの市場に根づこうとしている。ハスラー氏によると過去3年で Yen On の売上は500%成長したという。

日本のライトノベルはようやくアメリカで根付こうとしているが、それは読者ターゲットを見極め、彼らの動向を理解したうえでのマーケティング戦略の成功と言えるだろう。


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