コラム

この政治家を選んだのはどの地域の人か、もっと「見える化」しては?

2021年11月10日(水)20時03分
石野シャハラン
選挙の投票箱

ISSEI KATOーREUTERS

<政治の失敗で最も被害を受けるのは若者たち。自分の利益のために声を上げるべき彼らの投票率を上げるにはどうすればよいのか>

衆議院選挙の結果が出たが、私が気になるのは投票率が上がるのかどうか、ということであった。残念ながら、今回も投票率は低かった。

未曽有のパンデミックで、高齢者や基礎疾患を持つ人を除けば、その負の影響をより多く受けたのは若者だったと思う。大学生、就活生、若手社員、非正規労働者......社会の大きなショックの波をもろに受けるのはいつも若者たちだ。

バブル崩壊やリーマン・ショックがそうであったように、今回のコロナ禍でも将来の夢や希望をへし折られ、病んでしまう若者を何人も間近で見た。

心の痛む現実であるが、同時に、日本の若者にはもっと声を上げてほしいとも思う。彼らはあまりにおとなしい。大したデモもしないしストライキもしない。みんな社会に出る前から、老人のように達観しているようだ。しかし若者にとって人生は長い。せっかくの人生なのだから、声を上げてより良いものにしなくてどうするのか。

つまりは選挙に行き、自身に利益をもたらす政策を掲げる人や党に投票しなければならない。そうでなければ高齢者や既に成功している層にだけ都合のいい、若者にはしわ寄せばかりが来る社会になってしまう。

誰に投票すればいいのか分からないという理由のほかに、若者が選挙に行かない理由で多いのは「いま住んでいる市町村で投票することができなかったから」なのだそうだ(総務省の2016年「18歳選挙権に関する意識調査」より)。つまり、住民票を地元に残して、会社や大学のある都市部に住んでいる若者がたくさんいる、ということだろう。

地元選出の議員が誰か知らない

こういう若者たちは、地元でも、現在住む場所でも、自分の利益を代表すべき議員や党を選んでいないことになる。残念なことだが、何となく理由も分からなくはない。国会議員は東京にいる姿ばかり報道されるので、地元選出の議員が誰だか分からない。分かってもピンとこないし、地元と自分の利益を代表している人には全然見えないのだ。

実際、地元に戻るのは盆暮れと選挙のときくらい、という議員もいるだろう。それに帰ったところで会って話すのはいつも同じ支持者ばかりで普通の人には関係ない、という感じがするのである。

そこで私から一つ提案がある。アメリカのテレビニュースでは、連邦議会議員がコメントするときに所属する党と選出された州の名前がテロップに出ることが多い。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=まちまち、好業績に期待 利回り上昇は

ビジネス

フォード、第2四半期利益が予想上回る ハイブリッド

ビジネス

NY外為市場=ドル一時155円台前半、介入の兆候を

ワールド

英独首脳、自走砲の共同開発で合意 ウクライナ支援に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story