最新記事

中国

コーギー犬をバールで殺害 中国当局がコロナ対策で...批判噴出

2021年11月22日(月)18時50分
青葉やまと

中国でオーナーの隔離中に保健所職員ペットの犬が殺された...... (写真はイメージ) JackSpoon-iStock

<飼い主の女性が自宅に戻ると犬はおらず、防犯カメラに悲痛な姿が残されていた>

ゼロコロナ政策を強力に推進する中国で、ペットがその犠牲になっている。SNS「微博(Weibo)」は市民の怒りで荒れた。

騒動の発端となったのは、微博で共有された一本の動画だ。住人が自宅リビングに設置した監視カメラが、隅に追い詰められた1匹のコーギー犬を捉えている。部屋には保健所職員とみられる防護服姿の人間が2名おり、コーギーは訝しげに2人を見上げる。

突如、職員の1人がコーギーの頭部にバールを振り下ろすと、ややあって室内には「ギャウ」という悲痛な鳴き声が響く。コーギーはテーブルの下に隠れようとするが、職員たちはテーブル下から犬を追い出し、動画はそこで途切れている。飼い主の女性によると犬はその後、感染性廃棄物を回収する黄色のバッグに入れて持ち去られた。

動画が11月12日に微博でシェアされると、職員による残忍な対応への怒りでネットは荒れた。関連コメントの合計閲覧数は2億回を超え、騒動を受けて市は謝罪している。市によると犬は「処理された」という。

現場は中部江西省のジョウジョウ市に位置するマンションの一室で、周囲は感染封じ込めのための重点区域となっていた。飼い主の女性は濃厚接触者であることが判明し、突如保健当局から隔離生活に入るよう告げられたという。ペットは隔離施設に持ち込むことができないが、自宅に置いておく分には問題ないとの説明だった。

住民の隔離と並行して、保健所が住戸を訪れ消毒作業を実施している。立ち入りのため自宅は解錠しておくようにとの指示に反し、住民はドアを施錠していた模様だ。当局から連絡を受けた警察が駆けつけ、強制的に解錠したところ、犬を発見したという。その後映像のように2人の職員が犬を虐待し、連れ去ったという流れになる。

残酷な映像に衝撃

残忍な行為を捉えた映像に、ショックを受けた微博ユーザーも多かった模様だ。「最初の打撃をみて、ビデオの再生を止めました」「胸が痛みます。もし自分がオーナーだったなら、何と悲しくみじめな気分になることでしょう」といったコメントが寄せられている。

人道に反するとの指摘の一方で、ペットが飼い主の所有物であることに着目し、財産権の侵害であると憤るコメントもみられた。「ペットはオーナーの私有財産であり、承認なく殺すことは許されない」「市民のプライバシーと財産の安全への侵害だ!」と反発するユーザーも多い。

本件は正当な理由がなく、さらに飼い主の同意もない状態で殺処分が行われたことになる。検査の結果、女性は陰性との結果が出ている。処分されたコーギーもそもそも検査を受けておらず、陽性が確認されたわけではなかった。仮に感染していたとしても、米CDCはペットから人への感染リスクは低いとの見解を示している。

市側は、問題の行動はあくまで職員個人の判断によるものであったと弁明している。職員はすでに免職処分を受けた。しかし微博では、ドアをこじ開けて侵入しペットを殺害したのであれば、責任者の指示があったはずだとの指摘も上がる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中