コロナ禍で検診受けられず...各国でがん進行のケース増加
がん検診を受けた人の数は、大幅に減った...... pixelfit-iStock
<検診が行えない状況が続いたせいで、いざ再開された今、がんのステージが進んだ状態で見つかる人が増えている>
アイルランドでは「がんの危機」
新型コロナウイルス感染症の流行拡大で、がんの検診から足が遠のいたり、検査自体が行われなくなったりなどで、やっと診断がついたときにはかなり進行した状態だった...という傾向が、世界各地で見られているようだ。
日刊紙アイリッシュ・タイムズは、「がんの危機」だと報じている。慈善事業団体アイルランドがん協会のアブリル・パワー最高経営責任者(CEO)がとあるイベントで、アイルランドの現状をこう表現したのだ。
同国では、新型コロナの感染拡大の影響により、がん検診自体を2020年3月から一時中断せざるを得なかった。子宮頸がんと大腸がんの検診は7~8月に再開されたが、乳がん検診の再開は10月まで待たなければならなかった。この3種類のがんだけでも、2020年に検診を受けた人の数は、前年比25万人減となった。
パワー氏によると、新型コロナが始まる前は、アイルランドでのがんの生存率が上昇していた。しかし検診が行えない状況が続いたせいで、いざ再開された今、がんのステージが進んだ状態で見つかる人が増えているという。
「がんは待ってくれない」
オーストラリアでも状況は同じだ。長期間にわたりロックダウンが行われたことにより、定期検診自体がしばらく実施できなかった。そのため、検査数そのものが減少した。
豪シドニー・モーニング・ヘラルドによると、2020年1~12月の間に行われたがんの検査数を、その前の3年間と比較したところ、減少数は16万4000件に達していた。特に、大腸がん、肝臓がん、肺がんで減少幅が大きかったという。結腸内視鏡検査やS状結腸鏡検査を含む大腸がん検診の実施数は13%減、肝臓がん検診12%減、肺がん検診9%減だった。
オーストラリアの政府機関キャンサー・オーストラリアのドロシー・キーフCEOはシドニー・モーニング・ヘラルドに対し、がん検診を受ける人が減ったことにより、がんにかかっていながら診断がついていない状態である人の数が、1~2万人に達している可能性もあると話した。キーフCEOはさらに、キャンサー・オーストラリアの発表文の中で、「がんは待ってくれない」と話し、早期発見の大切さを訴えている。
米国でも、がん検診の件数が減少したり、医師に相談するのもままならなかったりして、がんの発見が遅れるケースが増えている。米CNNは、体の不調を自覚してから実際に診断が下るまでに半年かかった看護師のアン・ラポートさんのケースを紹介している。
ラポートさんは、2020年の始めに体調の異変に気付いた。3月には疲労感や体の痛みがかなり強くなっていた。しかしちょうどその頃、新型コロナの感染拡大が始まったため、医療従事者であるラポートさんは、多忙のためのストレスかと思ったという。定期検診を受けられる状態になく、かかりつけ医に何度か診てもらう程度で、診断が下されない状態が続いた。8月に肺がんだと分かったときには、すでにステージ4になっていた。