最新記事

教育

誰にも悩みを相談できない日本の子どもたち

2021年9月8日(水)13時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

友人に悩みを相談する子どもの割合が、日本は他国と比較して高い KatarzynaBialasiewicz/iStock.

<「人に迷惑をかけるな」と言い聞かされているためか、特に男子は諸外国に比べて誰にも悩みを相談しない比率が高い>

新学期が始まったが、子どもの自殺は毎年9月1日に最も多発する。理由は言うまでもない。学校が始まることへの恐怖からだ。子どもの不安や自殺願望はインターネット上に吐露されることから、この時期、ネットパトロールが強化されている。

加えて昨今の自殺対策の特徴は、「SOSの出し方教育」に力が入れられていることだ。「命や暮らしの危機に直面した時、誰にどうやって助けを求めればよいか具体的かつ実践的な方法を学ぶ教育」のことで、学校で実施することとされている(内閣府『自殺総合対策大綱』)。

これまでの自殺対策は、当人へのカウンセリングや相談体制の充実が主だったが、SOSを出させるというのは真新しい視点だ。こういう考えが出てきたのは、日本の子ども・若者は自分から助けを求めない、という事実が認識されたからに他ならない。悩みを誰にも相談しない人の比率を国ごとに比べると<図1>のようになる(瑞典はスウェーデン)。男女で分け、年齢層別の数値を折れ線でつないだグラフだ。

data210908-chart01.png

日本の折れ線(赤色)は他国より高い位置にある。男子は顕著で、加齢とともに上昇する。20代後半の男子では33%にもなる(女子は21%)。

日本人は「人に迷惑をかけるな」と言い聞かされて育っているし、特に男子は「弱音を吐くべからず」という有形・無形の圧力を感じているのかもしれない。学校で「SOSの出し方教育」が重視されるようになった所以だ。困った時は遠慮せずSOSを出すべし、1人で抱え込んではいけない、ということだ。

自己責任論や根性論に囚われて、SOSを出せない子どものメンタルもほぐさないといけないが、SOSの受け止め方も問わねばなるまい。当の子どもは「相談したところで説教をされるだけ、事態が悪化するだけ」と思っているのかもしれない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ECB、賃金やサービスインフレを注視=シュナーベル

ビジネス

焦点:連休中の為替介入警戒、取引減で再動意も 米当

ビジネス

LSEG、第1四半期決算は市場予想と一致 MSとの

ワールド

北朝鮮製武器輸送したロシア船、中国の港に停泊 衛星
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中