最新記事

バラク・オバマ

オバマ回顧録は在任中の各国リーダーを容赦なく斬りまくり

Obama’s Frank Take on World Leaders

2020年11月24日(火)19時10分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌記者)

オバマの回顧録は在任中に会った各国指導者の印象を率直に書いている JAMIE MCCARTHY/GETTY IMAGES

<プーチンは「信頼できない派閥のボス」、メルケルは「あまりに保守的」、サルコジは「二枚舌」──各国指導者への辛口評価のオンパレード>

全2巻の刊行が予定されているバラク・オバマ前米大統領の回顧録の第1巻『プロミスド・ランド(約束の地)』が、11月17日に発売された。この本でオバマは、在任中に会った各国の指導者にかなり辛口の評価を下している。

ロシアのウラジーミル・プーチンは米地方政界の派閥のボスを思わせ、フランスのニコラ・サルコジは「大げさなレトリック」が大好き。中国の指導層については「世界秩序の覇権を握る準備ができていなかった」と書いている。

初めて国際舞台に立つ前に感じた不安も、率直に明かしている。「私に世界の指導者の1人になる準備はあるのか。外交の手腕、知識、体力、命令を下す威厳は十分なのか」

2008年大統領選で民主党の指名を確実にした後にはエルサレムのユダヤ教の聖地「嘆きの壁」を訪れ、当時の率直な気持ちと神への祈りを記した紙を壁の隙間に差し入れた。しかし「主よ、私の罪を許し、おごりと絶望からお守りください」と書いた紙は何者かに抜き取られ、ニュースとなって世界を駆け巡った。

「神と私の間だけの言葉のはずだった。だが翌日にはイスラエルの新聞に載り、やがてインターネット上に永遠に刻まれた。(中略)私にとって公私の境目はなくなろうとしていた。思考と行動の全てが世界の関心事になっていた」

最も興味深い逸話の1つは、ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領(当時)との間で米ロ関係を「リセット」したいというオバマの望みが、本当の実力者であるプーチンに会って崩れ去ったというものだ。その頃プーチンは首相だったが、大統領に返り咲くタイミングを計っていた。

オバマとの会談でプーチンは「永遠に続くかに思われた独白」を展開し、「それまで彼とロシア国民がアメリカから受けたという不正義、裏切り、侮辱を全て並べ立てた」。

さらにプーチンは、ロシア側がオバマの前任者であるジョージ・W・ブッシュに対し、テロ組織のアルカイダやイラク大統領だったサダム・フセインに関する機密情報を提供すると申し出たのに、ブッシュは「忠告を聞かずイラクを攻め、中東全域を不安定化させた」と不満を述べたという。

プーチンの長広舌はさらに続き、NATOがいかにロシアの勢力圏を侵食し、民主主義を無謀に推進しているかをまくし立てた。全ては、その後10年の米ロ関係に影を落とすことになる問題だった。

市議会の実力者のよう

側近からプーチンの印象を聞かれたオバマは、シカゴで草の根の声を政治に反映させる「コミュニティー・オーガナイザー」としてキャリアを出発させた経験からか、「奇妙なほど、よく知っているタイプだった」と答えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

ロイターネクスト:為替介入はまれな状況でのみ容認=

ビジネス

ECB、適時かつ小幅な利下げ必要=イタリア中銀総裁

ビジネス

トヨタ、米インディアナ工場に14億ドル投資 EV生
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中