最新記事

核合意

IAEA、イランのウラン濃縮拡大を確認 英仏独が声明で非難し国連制裁の再発動も

2019年11月12日(火)12時00分

国際原子力機関(IAEA)は11日、イラン中部フォルドゥの地下核施設におけるウラン濃縮活動の開始を確認したと明らかにした。ウィーンで3月撮影(2019年 ロイター/Leonhard Foeger)

国際原子力機関(IAEA)は11日に発表した四半期報告書で、イランが中部フォルドゥの地下核施設でウラン濃縮活動を開始したと確認した上で、低濃縮ウラン貯蔵量が引き続き拡大したと明らかにした。

報告書は「2019年11月9日以降、イランはフォルドゥの施設でウラン濃縮を行っている」としている。報告書は加盟国に送付された。イランは前週、15年の核合意の履行停止第4弾として同施設で遠心分離機にウランガスを注入し、ウラン濃縮を再開すると発表していた。[nL3N27L57N]

イランは7月初旬以降、濃縮ウランの貯蔵量とウラン濃縮度に関しても、核合意で定められた上限を相次いで破っているほか、旧式の「IR1型」以外の遠心分離機でのウラン濃縮の禁止規定も違反している。

核合意の下で限定的なウラン濃縮活動が認められている中部ナタンズの施設では、合意違反である高性能の遠心分離機を稼働させている。

外交筋によると、イランの濃縮ウランの生産量も従来の1カ月当たり計70─80キログラムから約100キログラムに増えており、さらに加速しているという。「1カ月当たり100キロから大幅に増えると見込んでいる。150、170、あるいは200キロになるのかどうかは分からない」と述べた。

IAEAの報告書によると、低濃縮ウラン貯蔵量は372.3キロと、核合意の上限202.8キロを大幅に超過。濃縮度も4.5%と規定の3.67%を上回るが、イランが過去に達成した20%の水準には届いていない。核兵器への転用が可能なウランの濃縮度は90%以上とされる。イラン原子力庁(AEOI)は9日、イランにはウラン濃縮度を最大60%まで引き上げる能力があると表明した。

また、核合意で認められていない遠心分離機を数基導入したと確認。「IR8s型」、「IR9型」などが含まれているという。

ウラン濃縮活動を再開したとするイランの7日の発表を受け、フランス、英国、ドイツは11日に共同声明を発表、イラン核合意に盛り込まれた紛争解決メカニズムを検討する方針を明らかにした。これにより、イランの合意違反に対する国連による制裁が再び発動される可能性が高まっている。

仏英独の3カ国は、イランの行動は中東地域の緊張緩和に向けた3カ国の取り組みを妨害していると非難するとともに、イランのウラン濃縮活動の再開決定を非常に懸念していると表明した。

声明の中で、3カ国は「中東地域の緊張緩和のための条件を整え、それを後押しするため、引き続き外交努力をする用意がある」とする一方、「こうした取り組みは、最近のイランの行動により一段と困難になっている」と指摘した。ただ、直接制裁を促すことはしなかった。

さらに、10月にイランがIAEAの査察官を一時拘束したとされる問題を受けて、査察活動でIAEAに全面的に協力するようイランに求めた。

外交筋が先週ロイターに明らかにしたところによると、イランはIAEAの査察官を一時拘束し、出国に必要な書類を没収した。2015年にイランが欧米などと核合意を結んだ後、査察官の活動がこのような形で妨害を受けるのは初めてとみられる。

*内容を追加しました。

[ウィーン/パリ ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191119issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月19日号(11月12日発売)は「世界を操る政策集団 シンクタンク大研究」特集。政治・経済を動かすブレーンか、「頭でっかちのお飾り」か。シンクタンクの機能と実力を徹底検証し、米主要シンクタンクの人脈・金脈を明かす。地域別・分野別のシンクタンク・ランキングも。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

LSEG、第1四半期決算は市場予想と一致 MSとの

ワールド

北朝鮮製武器輸送したロシア船、中国の港に停泊 衛星

ビジネス

大和証G、1―3月期経常利益は84%増 「4月も順

ビジネス

ソフトバンク、9月末の株主対象に株式10分割 株主
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中