最新記事

トランプ弾劾

米NSC高官「トランプのウクライナへの捜査要請は不適切」 弾劾調査で証言

2019年11月20日(水)11時27分

トランプ米大統領のウクライナ疑惑を巡る弾劾調査で、国家安全保障会議(NSC)でウクライナ問題を担当するビンドマン陸軍中佐(右)は19日、米大統領が選挙戦での対立候補の捜査を外国に要請したことは「不適切」だったとの認識を示した(2019年 ロイター/ERIN SCOTT)

トランプ米大統領のウクライナ疑惑を巡る弾劾調査で、国家安全保障会議(NSC)でウクライナ問題を担当するビンドマン陸軍中佐は19日、下院情報特別委員会の公聴会で、米大統領が政敵の民主党バイデン前副大統領の捜査をウクライナに要請したのは「不適切」だったとの認識を示した。

この日は、ペンス副大統領の外交顧問を務めるジェニファー・ウィリアムズ氏も証言に臨んだ。2人はトランプ大統領がウクライナのゼレンスキー大統領にバイデン氏親子を捜査するよう求めた7月25日の電話会談を傍聴しており、ともにトランプ氏の要求が本質的に国内政治に絡んでいるとの印象を受けたと述べた。

ビンドマン氏は公開証言で、「米大統領が外国政府に対し、米国民かつ政敵の捜査を要求するのは不適切」と指摘。「会談を傍聴していて耳を疑った。ある意味、対ウクライナ政策を巡って最も恐れていたことが起きているようでショックだった」と胸の内を明かした。

またウィリアムズ氏も会談内容は国内の政治問題に関わると感じられ、異常かつ不適切だったとした。

一方、元ウクライナ担当特別代表のカート・ボルカー氏も証言し、バイデン氏親子を巡る疑惑を米政府は追及すべきではなかったとの見解を示した。バイデン氏批判に「説得力はなかった」とも述べた。ボルカー氏はウクライナ政府に汚職捜査を公約するよう迫った米政府当局者の1人。

同氏は、バイデン氏の息子が役員を務めていたウクライナのガス会社「ブリスマ」に関する捜査依頼が、実際はバイデン氏への捜査要請だとは認識していなかったと言明。「後から考えれば、違和感を感じるべきだった。そうすれば私なりに異議を唱えていたはずだ」と述べた。

トランプ氏がウクライナは腐敗した国だと述べ、同国に批判的だったとも語った。

人格を攻撃

トランプ大統領はこれまで、ウィリアムズ、ビンドマン両氏をツイッターで「ネバー・トランパー(何が何でもトランプ氏を認めない人)」だと攻撃してきた。

ビンドマン中佐は公聴会に軍服姿で出席。大統領の弾劾調査で証言する公務員の「人格を攻撃」する行為は「非難に値する」と訴えた。ビンドマン氏の家族は40年前にソ連から亡命している。

同氏の証言中もホワイトハウスの公式ツイッターアカウントには同氏の見解を非難する投稿が行われた。トランプ氏の息子ドナルド・トランプ・ジュニア氏はこれとは別に、ビンドマン中佐は「レベルが低い党派色丸出しの官僚で、それ以上ではない」とツイートした。

米当局者は匿名を条件に、ビンドマン氏に安全面での懸念があれば、家族と共に軍施設内に移り住む可能性があると明らかにしている。

一方、共和党の上院トップ、マコネル院内総務は、下院がトランプ氏を弾劾訴追した場合、上院で開かれる弾劾裁判で議員の3分2が賛成するとは「考えられない」とコメントした。

ロイター/イプソスの米国内の世論調査によると、トランプ氏弾劾への賛成は46%、反対派は41%と分かれている。

*見出しを差し替え、本文に内容を追加しました。

[ワシントン 19日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191126issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月26日号(11月19日発売)は「プラスチック・クライシス」特集。プラスチックごみは海に流出し、魚や海鳥を傷つけ、最後に人類自身と経済を蝕む。「冤罪説」を唱えるプラ業界、先進諸国のごみを拒否する東南アジア......。今すぐ私たちがすべきこととは。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ほぼ横ばい、経済指標や企業決算見極め

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米指標やFRB高官発言受け

ビジネス

ネットフリックス、第1四半期加入者が大幅増 売上高

ビジネス

USスチール買収計画の審査、通常通り実施へ=米NE
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中