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イギリス下院、合意なきEU離脱阻止法案を可決 ジョンソンは総選挙なお視野に

2019年9月5日(木)09時11分

英議会下院は、10月31日に英国を合意なしで欧州連合(EU)から離脱させようとするジョンソン首相の動きを阻止する法案を可決した。写真はロンドンの英議会前で英国旗を掲げる人(2019年 ロイター/Henry Nicholls)

英議会下院は4日、10月31日に英国を合意なしで欧州連合(EU)から離脱させようとするジョンソン首相の動きを阻止する法案を可決した。また、10月15日の総選挙実施を求める首相の提案を否決した。

これにより、英国のEU離脱を強行に進めようとする同首相は手を縛られる結果となり、問題の行方は合意なき離脱から離脱断念まで、先行きが読みにくい状況が続くことになる。

下院は、3カ月の離脱延期を要請することを政府に強制する法案を可決。野党・労働党のコービン党首は、同法案が上院でも承認され成立すれば早期の総選挙実施に同意すると表明した。上院での承認は9日になる可能性がある。ただ、同党首はジョンソン首相が選んだ選挙日程に同意するかどうかは明らかにしなかった。

ジョンソン首相は離脱延期法案について、自身のEUとの離脱交渉を損なっており、2016年の国民投票における離脱決定を覆す狙いがあると指摘した。

首相は「国際交渉での降伏を首相に強いる議会史上前例のない法案」と非難し、「私は拒否する」と明言。「国民に誰を首相として選ぶのかを決めさせる以外に下院の選択肢はなくなった」として、総選挙の実施を強く求めた。

予想される選挙

ジョンソン首相が10月15日に総選挙を実施するには議員の3分の2に相当する434人が賛成票を投じる必要があった。しかし、下院は賛成298反対56でこれを否決。労働党は同党議員に対し棄権するよう促していた。

[ロイター]


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ただ、首相の動議が否決されたものの、総選挙が実施される可能性はなお残っており、その場合は3つの結果が考えられる。(1)ジョンソン氏の下でのEU離脱推進政権(2)EU残留を選択肢として問う再国民投票を公約するコービン氏率いる労働党政権(3)連立もしくは少数与党政権での宙づり議会(ハングパーラメント)、というシナリオだ。

首相は10月17─18日のEU首脳会議で新たな合意を得たいとするが、議会を通過できなかったメイ前首相の案よりも良い合意が得られるのか疑念も出ている。

*見出しと内容を更新しました。

[ロンドン 4日 ロイター]


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