米国防総省、モジュール型宇宙軍事基地案を募集
1960年代にあった有人の軍事宇宙ステーション構想図 Manned Orbiting Laboratory:MOL Credit: National Museum of The US Air Force
<米国防総省が、将来は宇宙基地となるかもしれない「Orbital Outpost(軌道前哨基地)」と呼ばれる地球低軌道の自律型宇宙ステーションの構築案を米国内企業から募集している......>
米国防総省(DoD)が、「Orbital Outpost(オービタル・アウトポスト:軌道前哨基地)」と呼ばれる地球低軌道の自律型宇宙ステーションの構築案を米国内企業から募集している。将来は有人滞在も視野に入っており、文字通り宇宙基地となるかもしれない。提案は2019年7月9日まで受け付けられ、2020年度の予算で開発が始まるという。
募集要項によれば、宇宙ステーションは次のスペックが要求されている。
・1立方メートル以上の内部空間
・80キログラム以上のペイロード
・1キロワット時以上の電力供給
・100kbps以上の通信性能
・0~1気圧までの気密性能
モジュール型で拡張性を持った提案が望ましいとされ、「宇宙製造」「微小重力実験」「ロジスティクス」「ストレージ」「製造」「教育」「試験」「評価」「ペイロードホスティング」などの目的で使用されるという。
将来的には、結合機能やロボットアームやエンジンを取り付けられるインターフェース、有人/無人を含む同型の他のモジュールとの結合などの機能が求められる。さらに、軌道間の移動、低軌道以遠で放射線からの防護目的での使用といった可能性もある。
募集しているのは国防イノベーションユニット(DIU)という国防総省の部署で、最先端の技術や科学者を始めとする専門家へアクセスする窓口だ。米国で国防上の要請による宇宙開発は企業を支える重要な資金となっている。ボーイングやロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマンといった旧来の航空宇宙企業はもちろん、イーロン・マスクのスペースXやジェフ・ベゾスのブルー・オリジンといった企業も、空軍の衛星打ち上げロケット計画に採用されることが大きな目標の一つだ。
1960年代の軍事宇宙ステーション
軌道上の軍事宇宙ステーションという構想は新しいものではない。1960年代には、NASAの有人宇宙計画「ジェミニ計画」で開発されたジェミニ宇宙船を基に、有人の軍事宇宙ステーション「Manned Orbiting Laboratory:MOL」を開発する構想があった。1963年当時、空軍の中での名称は「Manned Military Orbiting Laboratory(有人軍事軌道実験室)」だったが、計画発表の際にジョンソン大統領が「軍事」の語を外したという。とはいえ軍の偵察衛星シリーズを踏襲する「KH-10」のコードがつけられており、軌道上から宇宙飛行士が地上を偵察するという構想だった。