アベンジャーズ大ヒットを支えたもう一つの要因 「薬物使用俳優」に寛容な米国社会
ロバート・ダウニー・Jrが2009年ハリウッドのチャイニーズ・シアターで手形をつけるセレモニーに母親とともに出席。この数年前までは薬物依存症に苦しめられていた。 Fred Prouser - REUTERS
ピエール瀧のコカイン所持逮捕事件が、波紋を呼び続けている。CMの放映は中止され、大河ドラマも別の役者で再撮影されるとのこと。それらをめぐって損害賠償はどうなるのかという話題も聞く。
言うまでもなく、悲しいかなハリウッドは、違法ドラッグがらみのトラブルに関して経験豊かなベテランだ。有名スターがこのような事件で逮捕された場合、アメリカではどれくらいの騒ぎになるのか?
「キャリアが終わる」ことはない
答えを先に言うなら、ほとんど騒がれない。過剰摂取(OD)で命を落とした、あるいは落としそうになったとなれば、もちろん大ニュースだ。だが、逮捕されただけならば、誰も大して驚かないというのが、実際のところなのである。
薬物使用でキャリアが落ち目になったスターも、もちろんいる。しかし、それは逮捕のせいで映画やテレビから締め出されたというより、依存症の影響で職場に迷惑をかけた結果である。遅刻や無断欠勤をする、セリフを覚えてこない、などだ。
そんな人を雇うと振り回されて大変だし、何しろ保険会社が嫌う。ハリウッドでは映画の製作プロジェクトごとに保険に入るのだが、キャストにこういう人物がいると、保険代が桁外れに高くなるのだ。
「アベンジャーズ」「アイアンマン」シリーズでおなじみのロバート・ダウニー・Jr.は、過去に薬物がらみで服役し、出所してきた後、ウディ・アレンから出演をオファーされるも、出演にあたっての高額な保険代が理由で最終的に断られた。
彼の場合は、親しい友人メル・ギブソンが、「保険代は自分の懐から出す」と、自らプロデューサーも兼任する映画『The Singing Detective(日本未公開)』に出させてくれたおかげで、復活の機会を与えられている。リンジー・ローハンも、保険が高くなりすぎて「事実上雇えない人」のハンコを押された1人だ。