最新記事

宇宙ゴミ

インドの対衛星ミサイル実験で、大量の宇宙ゴミが発生

2019年4月5日(金)17時00分
松岡由希子

「大量の残骸が発生し、すでに400個以上が確認されている」slavemotion-iStock

<先日、インドが対衛星ミサイルで人工衛星を破壊する実験に成功したと発表したが、これにより大量の宇宙ゴミが発生したとNASAが批判している>

インドのモディ首相は、2019年3月27日、「宇宙空間において対衛星ミサイルで人工衛星を破壊する実験に成功した」と発表した。高度300キロメートルの低軌道(LEO)を周回する人工衛星を標的に、地上から対衛星ミサイルを打ち上げ、これを破壊するというもので、これまでにインドのほか、米国、ロシア、中国が同様の実験に成功している。

「人類の宇宙飛行の未来と相反するもので、容認できない」

インド政府が実験の成果を強調する一方、アメリカ航空宇宙局(NASA)のジム・ブライデンスタイン長官は、4月1日、NASA本部のジェイムズ・E・ウェッブ記念講堂で開催されたNASA従業員との対話集会において「インドの対衛星ミサイル実験によって大量の残骸が発生し、すでに400個以上が確認されている」ことを明らかにした。そして、「このような行為は人類の宇宙飛行の未来と相反するものであり、容認できない。」と批判した。



NASAでは軌道上の残骸のうち10センチ以上の大きさのもの60個を継続的に追跡しており、そのうち24個は国際宇宙ステーション(ISS)上空の遠地点にあることがわかっている。また、NASAと連合宇宙作戦センター(CSpOC)が共同で実施した影響評価によると、これらの残骸が国際宇宙ステーションに影響をもたらすリスクはインドの実験後10日間で44%上昇した。

国際宇宙ステーションは必要に応じて残骸を避けるよう操作できる仕組みとなっており、任務にあたっている宇宙飛行士の安全は確保されているものの、ブライデンスタイン長官は「国際宇宙ステーション上空の遠地点に残骸を送り込むような事態を引き起こすのは非常に恐ろしいことだ」と強い懸念を示している。

インド側は「残骸は6ヶ月以内に消滅する」と主張するが......

インド宇宙研究機関(ISRO)でシニアアドバイザーを務めるタッパン・ミスラ氏は、インド紙「インディアン・タイムズ」において「今回の実験による残骸は6ヶ月以内に消滅するだろう」との見通しを示している。

しかし、低軌道衛星の商用化のほか、創薬や医療分野での研究開発や微小重力を活用した製造業の展開など、宇宙空間において人類が様々な活動に取り組もうとするなか、いわゆる"宇宙ゴミ"がこれらの活動を妨げるおそれもあることから、今回のインドの実験は波紋を呼びそうだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=続伸、マグニフィセント7などの決算に

ビジネス

NY外為市場=円、対ユーロで16年ぶり安値 対ドル

ビジネス

米テスラ、新型モデル発売前倒しへ 株価急伸 四半期

ワールド

原油先物、1ドル上昇 米ドル指数が1週間ぶり安値
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 10

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中