最新記事

宇宙開発

すっかり落ちぶれてしまったロシアの宇宙開発、ようやく再生の兆し

2018年6月1日(金)16時14分
鳥嶋真也

ロシアの宇宙開発の復活に向けた動きが始まった (C) NASA

<近年、すっかり落ちぶれてしまったロシアの宇宙開発。ようやく再生に向けた動きがはじまっている>

今年3月に行われたロシア大統領選挙は、現職のプーチン氏が圧勝。5月8日には4期目となるプーチン政権が発足し、18日までにメドヴェ―ジェフ首相以下、新内閣の顔ぶれが明らかになった

その中で、第2期プーチン政権の途中から約6年にわたって副首相を務め、軍事・宇宙分野を担当してきたドミートリィ・ロゴージン氏は退任。代わってユーリィ・ボリーソフ前国防次官が同ポストに就任するという動きがあった。

この交代の理由として、ロゴージン氏の副首相時代に、ロシアの宇宙開発で失敗が相次ぎ、さらに改善もできなかったためという見方がある。事実、かつては米国と並ぶ"宇宙大国"と呼ばれたロシアは、いまではすっかり落ちぶれてしまっている。

space001.jpg

ドミートリィ・ロゴージン氏。これまで約6年にわたって副首相として軍事・宇宙分野を担当してきたが、退任。国営宇宙企業の社長となった (C) Roskosmos

ロシア宇宙開発の崩壊

ロシアの宇宙開発の崩壊は、ロシア連邦が誕生した1991年から、すでに始まっていた。

ロシアはソ連時代に築かれた、ロケットや衛星、宇宙船の技術の大部分を受け継いだ。その技術の高さは折り紙付きで、米国企業の人工衛星を打ち上げたり、共同で宇宙ステーションを建造したりなど、冷戦中には考えられなかった事業がいくつも実現した。

しかしその一方で、ロシアとしての新たな宇宙計画はなかなか立ち上がらず、立ち上がったとしても中止や遅延、そして失敗を繰り返した。

たとえば次世代ロケットとして期待された「アンガラー」は、1990年代に開発が始まるも、打ち上げられたのは2014年になってからだった。火星探査機はすべて失敗し、さらに気象衛星や測位衛星も打ち上げられなかったり故障したりと、満足に運用できなかった。

ソ連時代の遺産を切り売りすることで、なんとか体面を保つことはできたものの、それも近年では陰りが見えはじめ、その"枯れた技術"によって長らく安定した運用を続けていたロケットも、打ち上げ失敗を起こすような有様となっている。

space002.jpg

近年、ロシアの宇宙開発は新しいものを造ることはもちろん、古いものを造る技術も失われつつある。2013年には1960年代から運用しているロケットが、センサーの取り付けミスで、打ち上げ直後に墜落するという大事故も起きた (C) TsENKI

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トヨタ、23年度は世界販売・生産が過去最高 HV好

ビジネス

EVポールスター、中国以外で生産加速 EU・中国の

ワールド

東南アジア4カ国からの太陽光パネルに米の関税発動要

ビジネス

午前の日経平均は反落、一時700円超安 前日の上げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中