大気汚染に悩む中国 情報公開による規制強化と社会不安でジレンマ
2月16日、健康を害する大気汚染との「闘い」において、中国政府はジレンマに陥っている。北京で1月撮影(2017年 ロイター)
健康を害する大気汚染との「闘い」において、中国政府はジレンマに陥っている。汚染排出者に責任を取らせるためには汚染データを公開しなければならないが、政府の公式発表ではない独立機関からの悪いニュースがあまりにも多ければ、社会不安を招きかねないからだ。
中国政府はデータの収集方法を大幅に改善しており、その情報公開も進め、虚偽報告を取り締まっているが、その一方で、携帯端末向け人気アプリや携帯型計測装置による、未公認ないし不正確なデータが広まることを懸念している。
この矛盾したアプローチには、中国の政治改革の方向性をめぐる、より幅広い議論が反映されている。学界出身のトップが率いる環境保護部(MEP)は、独立した監視機構と法の支配に基づく現代的な規制制度の創設を望んでいる。だがそうなると、安定性を最優先に考える共産党政権の機嫌を損ねる可能性がある。
またデータ捏造をめぐる複数のスキャンダルもあり、政府は代替的な情報源が汚染レベルを伝えることで公式統計に対する国民の信頼感が損なわれ、「環境は改善されている」との政府メッセージが揺らぐことを懸念している。
北京のアップルストアで販売されている携帯型の汚染測定装置「レーザー・エッグ」を製造するオリジンズ・テクノロジーのリアム・ベイツ最高経営責任者(CEO)によれば、中国当局は、市民による大気汚染測定を何ら問題視していないという。ただ、その測定結果が公開されることを嫌がっているだけだ、と同CEOは語る。
「基本的に(中国は)非公式な情報源からのデータ公開は違法だとしている。私の知る限り、研究目的でのデータの収集や、処理、利用については問題はない」とベイツCEOは言う。
中国政府は、データの精度が主な懸念点だと主張する。
2014年、中国政府は、米国大使館や領事館が提供する大気汚染データは政府公式データと食い違っている懸念があるとして、携帯電話用の汚染計測アプリで、それらのデータを使わないよう命じた。最近では、政府が提供するものよりも詳細な国内大気汚染状況を提供しようとしたアプリが捜査の対象になっている。
個人による「風説ビジネス」と政府が表現する最近の例では、中国南西部の成都で男性1人が5日間警察に拘束された。地元メディアによれば、この男性は中国版ツイッターの微博に、成都は「2000年の歴史で最悪のスモッグ」に見舞われていると警告したという。