「国境税」の脅威、トヨタら企業はロビー活動で阻止へ
1月31日、あらゆる輸入品に課税するという米共和党の法案が議論を呼ぶなか、トヨタ自動車は米国内の傘下ディーラーに対し、「この税は自動車購入者に深刻な影響を与える」と政治家に訴えるよう求める緊急メッセージを送った。写真はメキシコとの国境に建てられたフェンスを眺める少年。2016年9月撮影(2017年 ロイター/Jose Luis Gonzalez)
あらゆる輸入品に課税するという米共和党の法案が議論を呼んでいるが、同党議員による協議を数日後に控え、トヨタ自動車<7203.T>は米国内の傘下ディーラーに対し、「この税は自動車購入者に深刻な影響を与える」と政治家に訴えるよう求める緊急メッセージを送った。
トヨタ系列ディーラー1500店の一部はこの呼び掛けに応じた。関係者によれば、法案作成に当たっている下院歳入委員会のメンバーに連絡を取り、法案について考え直すよう促したという。
輸入品に20%の税金をかければ、自動車を買う消費者は数千ドルもよけいに払わざるをえなくなる可能性がある、と彼らは警告する。
こうしたトヨタによるディーラーの大量動員からも、米国内で輸入品を販売する世界有数の企業のあいだで、警戒心が高まっていることがうかがわれる。彼らは輸入品に対する高率の関税によって売上高・利益に悪影響が生じ、米国製の製品を主力とするライバルに対して不利になることを恐れているのだ。
「コストは上昇し、結果として需要は低下するだろう。そうなれば私たちは今日と同じだけの雇用を維持することができなくなる。それが何よりも心配だ」。トヨタの北米事業を統括するジム・レンツ氏はインタビューでそう語った。
トヨタ系列のディーラーは全米で9万7000人以上の従業員を雇用している。
企業や業界団体が、米議会に対してロビー活動を行うことは珍しくないが、国境税の脅威により、国内外を問わず、通常よりも広範囲の企業がロビー活動に乗り出している。
こうしたロビー活動はもっぱら世間の目に触れないところで行われることが多いが、その理由の一端は、米消費者向けに海外で製造活動を行う企業を攻撃しているトランプ大統領との潜在的な対立を避けるためだ。
1月初め、トランプ大統領はトヨタを標的にした。世界最大の自動車メーカーであるトヨタが米国市場向けの「カローラ」をメキシコの工場で生産するならば、巨額の税金を課すと脅したのである。
ホワイトハウスは先週、「国境税」はメキシコとの国境に「壁」を建設する費用を捻出する方法として検討されている案の1つだと発表した。ただ、トランプ大統領が厳密に何を計画しているのかはまだ明らかではない。大統領はメキシコからの輸入品に対して「高率の国境税」を課すと公言している。
下院共和党が提案した計画では、法人税を35%から20%に引き下げ、輸出による所得を課税所得から控除し、輸入に対して20%を課税することになっている。
輸入依存度の高い企業は、強調されている法人税減税の恩恵よりも「国境税」の痛手の方が大きいと話している。
自動車ディーラーが地元議員に働きかける一方で、トヨタをはじめとする自動車メーカーは、自社が大規模な生産施設を構え、何千人もの労働者を雇用している州選出の議員に対するロビー活動を進めている。
トヨタの自動車販売台数はゼネラル・モーターズ(GM)とフォード・モーターに次ぐ米国第3位。米国市場に年間約120万台を輸入しており、米国における販売台数240万台の約半分を占める。米国内では4万人を直接雇用している。