最新記事

原子力

アメリカとイラン、重水貯蔵量めぐりIAEA理事会で対立 核合意後初

2016年11月18日(金)19時01分

 11月17日、国際原子力機関(IAEA)の理事会で、イランの重水貯蔵量をめぐり米国とイランが公の場で初めて衝突した。欧米など6カ国とイランとの核合意では、重水貯蔵量の上限を130トンと規定している。写真はウィーンで昨年5月撮影(2016年 ロイター/Heinz-Peter Bader)

 国際原子力機関(IAEA)の理事会で17日、イランの重水貯蔵量をめぐり米国とイランが公の場で初めて衝突した。欧米など6カ国とイランとの核合意では、重水貯蔵量の上限を130トンと規定している。

 重水は、原子炉の減速材として用いられる。IAEAは、イランが今年この規定量を2回超過したと指摘、核合意に対する各国の支持を損なう恐れがあると警告した。

 米国のローラ・ホルゲートIAEA担当大使は「イランは合意事項をすべて厳格に守らなければならない」とする声明を発表した。

 核合意文書では、イランは必要以上の重水を貯蔵してはならないとしたうえで、その必要量は130トンと推定される、としている。欧米諸国がこの130トンを貯蔵量の上限と見なす一方、イランの解釈がこれとは異なることが対立の背景だ。

 IAEAによると、イランは重水貯蔵量を130トン未満に抑えるために一部の国外搬出に向けて準備している。しかしホルゲート氏は「実際に国外に搬出することなく、この重水は売却用だと説明するだけでは合意を順守していることにはならない」と指摘した。

 イランのレザ・ナジャフィIAEA担当大使は、非難の論点が明確ではないと反論。同氏は記者団に、イランはIAEAに当初報告した5トンを上回る重水の輸出を準備していると述べ、「合意文書では、イランが必要とする量を130トンと推定している。『推定』の意味を誰か教えてくれ」と訴えた。

[ウィーン 17日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノボ、米で「ウゴービ」値下げ CEO「経口薬に全力

ビジネス

米シェブロン、ルクオイルのロシア国外資産買収を検討

ビジネス

FRBウォラー理事、12月利下げを支持 「労働市場

ワールド

米下院、エプスタイン文書公開巡り18日にも採決 可
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中