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中国軍中国艦、領海侵入した日に日米印の共同軍事訓練で米空母を追尾
6月15日、中国の軍艦が日本領海に侵入した同日、沖縄本島の東方沖で行われている日、米、インドの共同軍事演習「マラバール」にも中国艦の影がちらついた。写真は米空母から飛び立つF18戦闘機。6日撮影(2016年 ロイター/Andrea Shalal)
中国の軍艦が日本領海に侵入した15日、沖縄本島の東方沖で行われている日、米、インドの共同軍事演習「マラバール」にも中国艦の影がちらついた。3カ国は対潜水艦戦などの訓練など通じ、海洋進出を強める中国をけん制しようとしているが、中国は情報収集艦を派遣して米空母を追尾した。
<南シナ海から後を追う>
共同演習は10日に開始、15日に報道陣に公開された。熱帯の蒸し暑い洋上に浮かぶ米原子力空母、ジョン・C・ステニスから、F18戦闘機が次々と離陸。敵味方に分かれ、対空戦の訓練を行った。
敵の戦闘機や巡航ミサイル役となったF18を、もう一方の戦闘機群と米艦が警戒、探知し、海上自衛隊、インド海軍と連携しながら対処した。
しかし、ステニスの周囲に米軍艦、海自の護衛艦、インド軍艦の姿は見当たらない。電波や通信を拾う中国の情報収集艦から追尾されているため、ステニスは訓練に参加する他の艦艇から距離を取っているのだという。
「中国の船がここから7─10マイル離れたところにいる。南シナ海からずっと(空母を)追いかけてきている」と、ステニスのハフマン艦長は記者団に語った。
この日は、未明に中国軍艦が鹿児島県口永良部島沖の日本領海に侵入。この船も情報収集艦で、日本政府は中国の意図の分析を急いでいる。関係者によると、佐世保港からマラバール訓練海域に向かうインド艦艇を追尾していたとみられる。
<フィリピンに立ち寄ったインド海軍>
日、米、インドがマラバールを実施するのは3年連続。前回は昨年10月にインド洋に接するベンガル湾で行った。今回は2年ぶりに日本近海、しかも沖縄本島の東方沖という、中国軍が西太平洋に出るのをふさぐような海域で実施している。
マラバールはもともと米、インド海軍の2国間訓練だった。中国との経済関係が揺らぐことを懸念したインドは、日本を含めた3カ国の演習に拡大することに乗り気ではなかったが、中国が中東への海上交通路(シーレーン)確保にインド洋への進出を強めると、3カ国は急速に距離を縮め始めた。
インドは今回の訓練に、フリーゲート艦など4隻を派遣。南シナ海で領有権をめぐって中国と争うベトナムのカムラン港、フィリピンのスービック港に立ち寄っている。「南シナ海は中国の海ではない、インドは中国と係争するフィリピンやベトナムとも友好関係にある、というメッセージだろう」と、日本の防衛研究所アジア・アフリカ室長の伊豆山真理氏は言う。
<中国の潜水艦を警戒>
日、米、インドが特に警戒しているのが、中国の潜水艦の動き。2006年10月、沖縄付近で中国のソン級潜水艦が米空母キティホークのすぐ近くに浮上。10年4月にはキロ級潜水艦が沖縄本島と宮古島の間を抜けて太平洋に進出した。
インド洋でも13年ごろから中国潜水艦が動きを活発化させており、14年9月には沿岸国のスリランカのコロンボ港に寄港してインドをいらだたせた。いずれ核ミサイルを搭載した原子力潜水艦が、南シナ海や西太平洋、インド洋を自由に動きまわることを3カ国は恐れている。
今回の訓練でも、潜水艦を探知して追尾する対潜水艦戦に力を入れている。米海軍は最新の哨戒機と原子力潜水艦を、海上自衛隊は対潜能力を備えたヘリコプター空母と哨戒機を投入。インドも対潜ヘリコプターを参加させた。
自衛隊の幹部は「マラバールは単なる親善訓練ではなく、実際の戦術、技量を向上させるためのもの。これを見た中国は、作戦や戦術を見直す必要があると考えるだろう」と話している。
(久保信博 編集:田巻一彦)