最新記事

シリア

ISとの戦いで窮地、アサド「兵が足りない」

内戦の間隙をISISに突かれて敗走を重ね弱体化したシリア軍

2015年7月28日(火)18時05分
ルーシー・ウェストコット

弱気 劣勢を認めたシリアの独裁者アサド SANA-REUTERS

 シリアの独裁者、バシャル・アサド大統領は1年ぶりの演説で、内戦のために兵は不足し、広範な国土も失った、と異例の訴えをした。演説は先週末、政府要人を集めた首都ダマスカスで行われ、テレビでも中継された。

 それでもアサドは戦いには勝利すると宣言。シリア軍が一部地域の放棄を余儀なくされたのは、他のより重要な支配地域を死守するためだったと述べた。既に国土の国土の75%を失った、という報道もある。

「ある土地を守り抜くためには、そこに兵力を集中して他の土地を諦めざるを得ない場合もある」とアサドは言う。「人材が不足している......軍に必要なものは何でも調達できるが、兵士だけはどうにもならない」

 今年3月で5年目に突入したシリア内戦は、もともとはアサドの政府軍と反政府軍との武力衝突から始まったが、そこへテロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)が入ってきた。シリアの国土の約半分は現在、ISISの支配下にある。

 ISISに支配された地域のなかにはトルコ国境に近いイドリブや古都パルミラ、ラッカなどが含まれる。ラッカは現在、ISISの事実上の首都になっている。

 アサドは内戦の政治的な解決を支持すると言いつつ、それがテロの一掃を前提としたものでなければ「空っぽで無意味だ」と、暗にISISや反政府軍の掃討を条件に匂わせた。

兵士には給与増額と1日1回の温かい食事を約束

 かつてシリア軍には30万人の兵士がいたが、この内戦で約8万人が殺されたという。脱走や徴兵忌避も兵士不足の一因だと、独立系テレビ局のアルジャジーラは報じている。

 シリア軍は先月、若者たちに対して兵役に就くよう呼びかけ、前線部隊には給与を増額するとともに1日最低1回は温かい食事を出すと約束した、とAP通信は伝えている。

 シリア内戦ではこれまで、推定で23万人が死に、100万人以上が負傷した。400万人が母国を逃れて難民になっているほか、何百万人という市民がシリアの国境地帯に避難している。

 シリア情勢は、最近トルコが対ISIS戦争に参戦したことで、一層複雑化している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中