6歳までがカギ──子どもの「考える力」の育て方
(写真はイメージ) Milatas-iStock
<「考える力」が重要だということは知られていますが、それが具体的に何を指すのか、実戦に移すために押さえるべきポイントは何か。「考える力」を支える「言葉の力」を醸成する過程で親ができることを紹介します>
現代社会では、医療やテクノロジーはもちろん、ダイエットから子育て方法に至るまで日々新しい発見や検証がなされ、それまでの常識をくつがえすような事柄が次々と生まれています。一体何を信じたらいいのかわからなくなるかもしれませんが、これはグローバル情報時代の宿命だと言えます。
変化の激しい社会では「自分で考えて判断する力」が求められます。情報を見極める力、常識を疑う力、未来を予測する力、多面的に考える力、自分の思考を検討する力など「考える力」が育っていなければ、氾濫する情報や社会の変化にふり回される人生を送ることになってしまうでしょう。
日本の教育で見落とされているのが「考える力」です。終身雇用や年功序列という日本の伝統的な雇用形態が消滅しつつある今、社会の変化に受け身に対処していては生き残ることはできません。これからの子どもたちには、変化に主体的に向き合い、未来を開拓していく力、自分で考える力が強く求められます。
自分は何を信じるのか、自分はどんな人生を送りたいのか、自分にとってベストな選択は何なのか。経験や直感に頼らず、周囲の意見に流されず、自分の生き方を見つめながら意思決定できる力、そんな「考える力」の育成方法について、乳幼児期の家庭教育を中心に解説します。
乳幼期に「言葉の力」を強固に育てる
「考える力」を育てる第一歩は「言葉の力」を強くすることです。当たり前なのですが、これをなおざりにしている親が多いのです。一昔前であれば、祖父母、兄弟姉妹、親戚、近所の人など、赤ちゃんは年齢も性別も職業も人生経験も異なる多様な人に囲まれ、たくさんの言葉に触れながら育ちました。だから親が特に意識しなくても子どもの言葉は育ったのです。
しかし、核家族化、少子化、都市化、情報化が進んだ今、赤ちゃんの周りから人が減り、コミュニケーション機会が減り、多様な言葉に触れる場面が極端に少なくなってしまいました。その結果、「生きた言葉のインプット」が足りなくなってしまったのです。今の時代は「放っておいたら言葉は育たない」のです。
子どもの言葉を強く育てるには、子どもが生まれてから「6歳まで」の家庭環境が極めて重要です。この時期の子どもは言葉を習得する最適期にあり、適切な言語環境があれば、二カ国語でも、三カ国語でも何の苦労もなく身につけることができます。
しかしその一方で、この時期に「生きた言葉のインプット」が不足すると、思考力の土台となる「言葉の力」が弱く育ってしまうのです。親と赤ちゃんがいつも二人きり、四六時中テレビやインターネットを見っぱなしという家庭では特に注意が必要です。
生まれてきた赤ちゃんの仕事は「環境に適応すること」です。子どもの周りに言葉という刺激が少なければ、「言葉は生きるために必要ないもの」と脳が認識してしまい、子どもの頭脳は言葉に対してあまり反応しないように育ってしまう可能性があるのです。
大切なのは頭脳の配線工事の90%が完成すると言われる「6歳まで」に生きた言葉の刺激を大量に与えること。言葉を大量に与えることで、脳の言語回路を複雑かつ強固に発達させることができます。この頭脳の土台が、将来の言語操作能力、言語理解力、思考力へと発展していくのです。
もちろん赤ちゃんは、いくら話しかけても言葉を理解するはずがありません。だからといって沈黙のまま過ごさせていると、言葉に反応しない子に育ってしまいます。親が子どもの世話や遊びを通して言葉をたくさんかけてあげれば、言葉が刺激となって、言葉に応じやすい言語回路がどんどん成長していきます。