希望の見えたTPPだが大統領選で頓挫する?
中間選挙での共和党の勝利が追い風になりそうだが、16年の選挙では自動車産業に逆らえない
敵にすれば負ける 自動車業界は議会に強い影響力を持つ(ミシガン州のフォード工場) Rebecca Cook-Reuters
米中間選挙で共和党が上院でも過半数を獲得し、TPP(環太平洋経済連携協定)に追い風が吹き始めたようにも見える。しかし16年の大統領選をめぐるワシントンの動きが、最後にはTPPを頓挫させかねない。
筆者は以前から、中間選挙で共和党が勝てばアジアとの関係強化につながる可能性があると考えていた。自由貿易協定を支持する傾向が強い共和党が議会を制すれば、オバマ大統領に交渉を一任する貿易促進権限(TPA)法案が成立し、TPPを批准する可能性が高くなる。
事態はそのとおり進んでいるようだ。共和党が勝利を決めた後の記者会見で、上院多数党の院内総務となるミッチ・マコネル上院議員は、共和党とオバマ大統領は貿易協定について協力できると語った。オバマも記者会見で同様の感想を口にした。「輸出を増やし、新しい市場を開くために、(両党の)協力は可能だ」
TPA法案については議会の反発が強い。TPAが成立すれば、議会はTPPの内容について修正を求めることができなくなり、「承認するか、しないか」の選択肢しかなくなるからだ。それでもマコネルをはじめ共和党幹部は、新たな自由貿易協定の成立を重視し、TPA成立に賛成の意向を示している。
むしろTPP批准の大きな障害は合意内容そのものと、16年の大統領選に与える影響だ。中間選挙が終わった今、ワシントンの関心は次期大統領選に移っている。
問題となるのは、米政界では日本が農業と自動車産業を保護するために、関税撤廃に強く抵抗しているとみられていることだ。自民党は、コメ、小麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の5品目の関税維持を決議している。
農業ロビーはアメリカでも議会への影響力が強い。既に多くの農業関係団体が、農産物の関税で日本の譲歩がない限り、TPP交渉から日本を外すよう要求している。特に自民党が保護しようとしている豚肉は、大統領選で接戦が予想されるアイオワ州やノースカロライナ州で生産されている。