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ロシアを侮辱したバイデンの愚か度

オバマのロシア訪問で「リセット」したはずの米ロ関係が、副大統領の「本音トーク」で台無しに?

2009年7月27日(月)16時21分
ダニエル・ドレズナー(米タフツ大学フレッチャー法律外交大学院教授)

口は災いの元 率直な物言いで知られるバイデン副大統領の発言は米ロ関係を損ないかねない Juan Carlos Ulate-Reuters

 グルジアとウクライナの訪問を終えたジョー・バイデン米副大統領のインタビュー記事が、7月24日のウォールストリート・ジャーナル紙に掲載された。バイデンの発言は「外交上手」とは程遠いものだった。


 ロシア人は苦しい現状に向き合わざるをえない。人口は減少し、経済は低迷し、銀行制度は今後15年間もちこたえられそうにない。世界は目の前で変化しているのに、彼らは続くはずのない過去の栄光にしがみついている。


 これがオフレコ発言だったなら、私だってバイデンの言葉に異論を差し挟むことはないだろう。だが「スマートパワー外交」の概念を考えると、「核クラブ」の仲間を理由もなく侮辱することなど許されないはずだ。ロシア側は、バイデンの発言を個人攻撃と受け止めるに違いない。

 もっとも、私の主張を鵜呑みにしてはいけない。バイデン自身の言葉を聞いてみよう。


 相手のメンツを著しく損なうような問題について、個人や国を当惑させるのは賢い方法ではない。私の父はこんな言い方をしていた。「お前を踏み倒す以外に逃げ道のない場所に相手を追い詰めるな。それは賢いやり方ではない」と。


 先日、白人警官がハーバード大学の黒人教授を泥棒と間違えて逮捕した事件を、オバマが「愚かな行為」と批難して物議を醸した。だが私に言わせれば、バイデンの発言こそ「愚か」だと思う。

[米国東部時間2009年07月25日(土)18時14分更新]

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