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出しゃばりチェイニーのオバマ批判

Dick Takes Manhattan

黒子に徹したブッシュ政権時代から一転、メディアに盛んに登場してオバマ批判を繰り返す前副大統領は迷惑者か

2009年05月18日(月)17時18分
ハワード・ファインマン(ワシントン支局)

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 その日、ディック・チェイニー前副大統領(68)は口を開くつもりはなかった。だが、ニューヨークで開かれたイラン政策についての討論会に同席していた人々は、チェイニーがどんどんしかめっ面になっていくのに気付いていた。チェイニーは、ブッシュ前政権下で国務次官を務めたニコラス・バーンズが外交の有効性について雄弁に語るのに耳を傾けていた。

 バーンズの主張は、フランス、イギリスにドイツ、そしてロシアや中国まで巻き込んで新しい外交を展開すれば、核兵器を手に入れたイランがペルシャ湾地域や世界を恐怖に陥れるのを阻止できるという内容だった。バラク・オバマ大統領の立場と同じだ。司会者は、前副大統領であるチェイニーに意見したいかと聞いた。もちろん、と彼は立ち上がった。

 チェイニーは諭すような口調で反論し始めた。いわく、外交が機能するのは各国が同じ目的を共有しているときだけだが、イラン問題について立場はバラバラだ。イランは核兵器開発について言い逃れを続けている。ヨーロッパはイランの核兵器保有を受け入れられるし、特にアメリカによる軍事行動を最も避けたがっている。イランが「軍事攻撃される可能性もある」と信じないかぎり、この問題は進展しない――。こう言うと、チェイニーは娘エリザベス(42)の隣に再び腰を下ろした。

 普通の父と娘にとって、ニューヨーク旅行は楽しいものだ。ショッピングやブロードウェイのミュージカルに出かけたり、博物館めぐりをするかもしれない。だがチェイニー親子にとって、少なくとも今は楽しんでいる時ではない。アメリカは危機に瀕している。彼らのみるところ、弱腰のオバマ政権はこの国を危険にさらしている。

 今回のニューヨーク訪問でチェイニーには使命があった。5月12日に開かれたイラン問題についての討論会で、発言に立つ元国務副次官補のエリザベスを援護し、会の結論として武力行使を「選択肢の一つ」にさせることだった。「私は緊張気味だったけど、父は私の一言一言に拍手を送ってくれた」と、後にエリザベスは語った。

 チェイニーは過去も現在も最も嫌われ者の政治家の1人だ。このところ盛んにメディアに登場してオバマを批判するこの前副大統領は、今も引退したとは思えないほどよく目につく。彼はオバマとは反対にテロ容疑者の水責め尋問を支持し、容疑者を拘束しているグアンタナモ米軍基地の閉鎖に反対し、「尋問手段を厳しくする」ことを可能にするメモを書いた弁護士たちに感謝こそすれ、その訴追には反対している。

 彼は自分の行動がひんしゅくを買うことを気にしない。実際のところ、友人たちによればチェイニーはむしろそれを喜んでいる(前大統領のジョージ・W・ブッシュはテキサスでの静かな隠居生活を好んでいる)。

 チェイニーが出しゃばることが共和党の仲間たちにとってありがたいことかどうかは定かではないが、党内保守派は人気のオバマに立ち向かうチェイニーに賛辞を送っている。保守的なトークショーの司会を務めるヒュー・ヒューイットは「彼を尊敬している。発言するとうれしい」と言う。

 今でもチェイニーに付いている顧問の1人でブッシュ前大統領の次席補佐官を務めたカール・ローブは、筆者にこう語った。チェイニーはオバマ批判の先頭に立つことで共和党議員たちの積極発言を促し、テロ容疑者の尋問方法をどこまで知っていたかについて、ナンシー・ペロシ下院議長と民主党議員たちが弁解を迫られるところまで追い込んだ――。

 共和党の世論調査会社によると、過酷な尋問方法についての有権者の反応は微妙で、かつ一様ではないという。「民主党支持者は反対しているが、共和党支持者と無党派層は賛成している」と、ローブは言う。

 それでも、論拠として世論調査を持ち出すくらいなら議論としてはすでに負けだろう。「今、虐待を正当化する人物として見られるのはかなりつらい」と、共和党の戦略を長年担当してきたチャーリ・ブラックは言う。他の共和党ブレーン(率直な発言をするため匿名を希望)もこう言う。「チェイニーが共和党の顔として動くことは、災い以外の何物でもない。彼はただの銃を持った不機嫌な老人だ」

 もっと根本的な問題は、チェイニーの行動が安全保障にとってプラスになるかどうかだ。チェイニー自身はイエスだと信じている。友人や家族によれば、彼の唯一の目的は自分が信じる政策を守ること。同時にチェイニーやその仲間たちは、彼らがオバマの政策を自分たちの方向に引っ張っていると考えている。

 先週、オバマが方針を転換して2000枚の拷問写真の公開を禁止したとき、彼らは得意気だった。オバマが実際に耳を傾けたのはチェイニーではなく、信頼できる自分の顧問たちの意見だったのだが。

 チェイニーはオバマの顧問の1人にはなり得ない。理由は明らかだ。チェイニーのイラクについての見解は、戦争前もその最中も、終結後も間違っているからだ。

 チェイニーは事実に疎かった。世界に対する甘い考えは許されないという点で彼は正しかったが、もし彼が「民主主義の楽園」を本気でつくれると信じていたのなら、彼こそが甘ちゃんだったのだ。民主主義には限界があるという点でも正しかったが、限界を試すところまでチェイニーが近づけた試しはなかった。

 チェイニーが「うろつく」ことはいいことだ。つらく不快な真実を語ってくれる人物が必要なのに、その人物としてチェイニーがふさわしいと信じてしまった過ちを私たちに思い出させてくれるからだ。

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