最新記事

医療

新型コロナの経口治療薬開発レース、シオノギら後発組も逆転狙う

2021年10月1日(金)17時19分

新型コロナウイルス感染症治療の飲み薬(経口薬)開発レースで、現在のところ優位に立っているのは、米製薬大手のメルクとファイザーだ。写真はメルクなどが開発中のコロナ治療薬のカプセル。メルクが5月に提供(2021年 ロイター)

新型コロナウイルス感染症治療の飲み薬(経口薬)開発レースで、現在のところ優位に立っているのは、米製薬大手のメルクとファイザーだ。両社はそれぞれ新薬候補の臨床試験(治験)結果を公表する準備に入った。

一方、出遅れたライバルたちは、より効果が大きく患者にとって負担が軽い飲み薬を生み出すことで一発逆転を狙っている。

これら後発組のエナンタ・ファーマシューティカルズ、パーデス・バイオサイエンシズ、塩野義製薬、ノバルティスらによると、彼らが開発しているのは新型コロナウイルスを狙い撃ちする抗ウイルス薬。服用回数を減らしたり、既に知られている安全面の問題を回避したりできる方法を探っているという。

感染症の専門家は、パンデミックを制御する上で最善の手段は、引き続きワクチンの幅広い普及を通じた新型コロナウイルス感染症の予防だと強調する。しかし、感染症はなくならない以上、今あるものより使い勝手の良い治療法が求められているとも指摘する。

カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部のロバート・スクーリー教授(感染症)は「新型コロナウイルスを抑え込むには、経口薬が必要だ。ワクチンを接種せずに感染する人、ワクチンの免疫機能が衰えつつある人、ワクチン接種を受けられない人がいるからだ」と述べた。

インフルエンザ治療薬をコロナに転用

こうした中で、ファイザーやメルク、ロシュとアテア・ファーマシューティカルズの連合は、いずれも年内に新型コロナウイルスの経口治療薬の緊急使用を申請する可能性があると表明している。

開発スピードの面で他の製薬会社は、少なくとも1年は遅れている。パーデスは先月、初期の治験を開始。塩野義は年末までに大規模治験を始める予定で、エナンタは来年早々治験に移行、ノバルティスはまだ動物試験の段階にとどまっている。

先頭ランナーの一角であるメルクの場合、リッジバック・バイオセラピューティクスと共同開発している治験薬「モルヌピラビル」は、ある時点までインフルエンザ治療薬として想定されていたが、「転用」した形だ。

これに関してエナンタのルリー最高経営責任者(CEO)は、当初別の感染症のために開発された薬を新型コロナウイルス治療に用いるのは一定の妥当性があるとしつつも、どこまで効果があるか、あるいはウイルスが浸透している肺組織をどの程度までピンポイントで標的にできるかは、分からない面があるとの見方を示した。

ルリー氏は「それほど効果がない場合、結局、時間のむだになる」恐れがあると警告する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バイデン氏、建設労組の支持獲得 再選へ追い風

ビジネス

米耐久財コア受注、3月は0.2%増 第1四半期の設

ワールド

ロシア経済、悲観シナリオでは失速・ルーブル急落も=

ビジネス

ボーイング、7四半期ぶり減収 737事故の影響重し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 2

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 3

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」の理由...関係者も見落とした「冷徹な市場のルール」

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 6

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    コロナ禍と東京五輪を挟んだ6年ぶりの訪問で、「新し…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中