中国の金融市場自由化、株価急落で大きく後退
強引な市場介入を進める政府に中国内の投資家からも批判の声
7月9日、中国は金融自由化を着実に進めていたが、先月から始まった株式市場の急落でそうした歩みが後退している。人民銀、北京で昨年5月撮影(2015年 ロイター/Petar Kujundzic)
[上海/香港 9日 ロイター] - 中国は金融自由化を着実に進めていたが、先月から始まった株式市場の急落でそうした歩みが後退している。中国指導部は2013年、資産価格の決定で市場に「決定的な」役割を担わせると約束。ただ、今では株式市場に対する前例のない介入を余儀なくされている。
ガベカル・ドラゴノミクス(北京)のアナリスト、アンドリュー・バトソン氏は「なりふり構わない介入は、改革に向けた政府の決意の信頼性や実行力に疑念が生じさせるだろう」と指摘する。
例えば、今年3月には株式新規公開(IPO)手続きの改革が打ち出されたが、需給悪化を恐れる政府はこのほど、複数の企業にIPO計画を中止するよう指示した。
また、証券各社は政府の意向に従い、総額1200億元(190億ドル)を株式購入に充てると発表。これは証券各社の海外展開に向けた資金も損なうことになる。
パイプ役の香港も打撃
中国市場に海外から資本を呼び込むためのパイプ役を担う香港も打撃を受けている。昨年11月には上海と香港市場の株式相互取引が始まったばかりだ。
ハンセン指数<.HSI>は4月の高値から16%下落。香港取引所<0388.HK>の株価下落率はその2倍強に達している。
香港取引所の経営陣はこれまで、深セン株式市場との相互取引、債券や商品の相互取引といったその他の中国関連プロジェクトに期待感を示していた。
香港取引所株を保有するある投資家は「出来高の落ち込みや、中国の市場改革がストップする可能性が意識され、香港取引所の株式に売りがかさんでいる」と話す。
「健全な市場なら介入不要」
MSCIは先月、ベンチマークとなるエマージング・マーケット・インデックスに中国A株を採用するのを見送ると発表。A株市場の自由化やアクセス性への懸念が背景となった。
実際に自由化やアクセス性は後退。中国証券監督管理委員会(証監会)はこのほど、持ち株が5%以上の株主を対象に向こう6カ月間、株式売却を禁止する措置を発表した。
証監会にコメントを求めたが、回答はなかった。