中国経済3つのシナリオ
金融危機後に脅威の回復力を世界に見せつけたが、今後はバブル崩壊か、成長維持か、それとも……
昨年秋以降の金融危機は、世界の政治経済にどんな影響を及ぼしたのか。この問いをめぐる議論のなかで、誰もが認める点が1つある。中国にとってはとても良い1年をもたらした、ということだ。
中国政府は大規模な財政出動と積極的な金融緩和策を打ち出し、輸出税の還付率を引き上げた。その短期的な成果は目覚ましいものだ。アジア開発銀行は9月に発表した報告書で、中国の09年のGDP(国内総生産)成長率を8.2%に、10年の成長率を8.9%にそれぞれ上方修正した。
雇用の回復も見られる。操業を再開した工場へ流れ込む労働者たちの姿は、失業率が10%の大台へと向かうアメリカとは対照的だ。9月24~25日に米ピッツバーグで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議(金融サミット)でも、中国は気候変動から経済格差まであらゆる問題で存在感を見せつけた。
この中国の迅速な回復ぶりをどう捉えればいいのか。そして将来的にどんな意味を持つのか。その解釈をめぐっては複数の見方が浮上している。
1つ目は「成長維持派」。近年の驚異的な成長率から考えると、中国は今後も地政学上の覇者として成長を続けるという見方だ。中国の統制型資本主義は、欧米の多くの専門家の予想を超えて何十年も安定して機能している。
19世紀アメリカとの類似
政治経済アナリストのザカリー・カラベルは、ニュー・リパブリック誌でこう論じている。「中国経済は崩壊どころか縮小の兆しも見られない。中国の経済政策に疑問を呈する声は多いが、結果がすべてを物語っている」
中国が今後も成長を続ければ、世界を豊かにする大国としての責務もますます大きくなるだろうと、成長維持派はみている。
2つ目に挙げられるのは「バブル崩壊派」。中国経済には維持できない不均衡が生じているとみる向きだ。中国経済を牽引するエンジンは輸出産業だ。しかし欧米の消費者が支出を切り詰め、貯蓄を増やしている現状では、エンジンはフル回転できない。