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グルメ食材が「絶滅」する日

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マグロが消える日

絶滅危惧種指定で食べられなくなる?
海の資源激減を招いた「犯人」は

2010.03.11
環境

グルメ食材が「絶滅」する日

Crisis in the Kitchen

売れ残ったフランスワインを工業用に

 台湾では日本からの輸入が停止しているにもかかわらず、日本産の高級和牛を売りにした店が多いため、当局が03年から大々的な取り締まりに着手。最近、26軒の店で抜き打ち検査をしたところ、どの店も実はオーストラリア産牛肉を売っていたことが判明した。畜産大手のオーストラリア農業会社は、和牛とアンガス種の混合種の牛肉「コーベ・キュイジーヌ」を台湾や香港へ輸出している。

 ただし当局の目的は、あくまで食の安全を守るための密輸摘発。日本産と偽っていたことが判明しても、安全面では問題がないのでおとがめなしだ。「オーストラリア産も日本産も質は同じだし、満足している」と、台北のレストラン「帝國牛排館」を訪れた客の一人は言う。これでは将来、さらに安価な「中国産コーベ」が世界で出回ることにもなりかねない。食の地域ブランドはルイ・ヴィトンのバッグなどと違って、商標で保護しにくいからだ。

 日本では、改正商標法が施行される06年4月以降は、地域ブランドの商標登録がしやすくなる予定。しかし登録したところで、国境を一歩越えればなんの効力もない。

 地域ブランドの保護に積極的なEUでは、特定の産地に由来する食品として認められれば、域内ではその原産国・地域でしか名前を使えない。今では、ゴルゴンゾーラチーズからアルデンヌハムまで、保護対象は700を超える。最近新たに加わったのが、ギリシャのフェタチーズ。ギリシャには朗報だが、他の地域のフェタ生産者の悩みは深刻だ。「わが社が受ける打撃は計り知れない」と、18年間イギリスでフェタを製造・販売してきたシェパーズ・パース社のジョン・カーウィンは言う。

 EUは05年4月、フランスのワイン生産者に補助金を出し、売れ残ったワイン約15万キロリットルを蒸留して工業用アルコールにするという衝撃的な発表を行った。「生産過剰が一番の問題だ」と、生産者団体のボルドーワイン委員会のバレリー・デキュデは言う。被害はボルドーなどの中級ワインにも及び、売り上げは大幅に落ち込んだ。

 新たな生産技術の導入に消極的なフランスの生産者に対し、オーストラリアやチリなど新興生産地はハイテクを駆使した生産方法で質の向上と低価格を実現してきた。消費者も、品質で分類するフランスワインよりブドウの種類で明快に分類する新興ワインを好むと、小売り関係者は言う。「市場が求めているのは現代的なブランドだ」と、イギリスのワインライター、ジェーミー・グッドは言う。

フカヒレ反対運動に台湾総統も参加

 モラル面で逆風にさらされている食材もある。ガチョウやカモに大量の餌を強制的に与え、肝臓を肥大させたフォアグラは、古代ローマ時代から食通に愛されてきた。だが、アメリカの動物愛護団体からみれば「虐待の極み」だ。

 カリフォルニア州では04年、フォアグラの製造・販売を2012年から禁止する法案が成立。アメリカ最大のフォアグラ農場があるニューヨーク州も、製造を禁じる法案を検討中だ。「伝統は動物虐待の言い訳にはならない」と、法案を提出した同州議会のジョン・マケナニー下院議員は言う。

 台湾ではフカヒレがやり玉にあがっている。動物愛護活動家は、漁師が生きたサメからヒレだけ切り取り、残りを半殺しのまま海に捨てていると主張。地元の漁業関係者は否定しているが、船上の作業なので真偽が確認できないうえ、他国で行われている可能性もある。

 人々がフカヒレを食べなくなれば問題は解決すると、立法委員で長年反対運動を行う趙永清(チャオ・ヨンチン)は言う。陳水扁(チェン・ショイピエン)総統が05年6月に行った息子の結婚パーティーでは、定番のフカヒレスープが姿を消していた。

 陳の反対姿勢はフカヒレに対する人々の見方が変化してきた表れだと、趙はみている。だが、水産会社の好得壯實業股份有限公司の陳美蓮(チェン・メイリエン)に言わせれば、人気取りのパフォーマンスだ。「フカヒレの売れ行きはどんどん伸びている」

未来のグルメ食材は中国が担う?

 このままではフォアグラや白トリュフを作る農家は消え、トロやキャビアは幻の食材になってしまうのか。そんなことはないと、米国ワイン&フード協会のジョディー・モーガンは言う。「アメリカでも今は、多様な食材を生産している。25年前は赤ん坊同然だったナパバレーのワインも、今では世界を代表するワインになった」

 グルメ食材の新たな担い手として、中国が台頭する可能性もある。すでに黒竜江産キャビアは商業ベースに乗りはじめ、フォアグラは「大きな輸出国になっている」と、コンサルティング会社アクセスアジアのポール・フレンチは言う。上海のラリスは、いずれポルチーニや白トリュフ、ハトやウズラも登場すると期待している。

 さらに、新たなグルメ食材も登場している。アメリカで最近注目されているのは、「クロブタ」スタイルの豚肉だ。純血のバークシャー種で、普通の豚肉よりしっとりしていてサシが多い。「人々は上質なものを求めはじめている」と、スネークリバー・ファームのジェイ・タイラー社長は言う。

 上質な牛肉や豚肉の人気が高まった背景には、炭水化物の摂取を制限するアトキンス流ダイエットが大流行したこともあると、モーガンはみている。「人々は以前よりヘルシー志向になったが、食事の楽しみはあきらめたくない」

 時代とともに、美食家が夢見る食材も移り変わっていく。次の「スター」に選ばれる食材にとっては、迷惑な話かもしれないが。

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