クラウド化知的生産革命
新世代コンピューティングの基礎知識
情報の価値は「果汁」次第で決まる
さらにクラウド・コンピューティングによって情報の入手可能性をめぐる問題は解消され、同時に「ジューサー・モデル」の重要性が高まる。単なる「事実」に関する情報は、情報を管理して相互作用を生み出すのに必要な実用的ノウハウと、情報の理解と知的活用のために欠かせない理論的知識に役立つ「果汁」を搾り出せる場合のみ、価値があると見なす傾向が強まる。
ただし、コンピューターは意味の処理が得意ではない。従って情報の入手可能性が無限に広がる状況が生まれることで、今度は情報の利用可能性(アクセシビリティー)や有益性といった従来からある意味論的な問題が浮き彫りになり、深刻化する。
知識を得るためには、情報の記号化に用いられる専門用語に精通している必要がある。こうした専門用語は今後ますます複雑になり、需要も高まるだろう。幸いクラウド・コンピューティングは、1つの問題を処理するために複数の情報システムを投入する新しい「知的並行処理」の発達を促す。
情報のセキュリティーについては、私たちは自分のデータを物理的に所持しなくなることで、それを守れるようになる。データは貴重なものだが、物理的なモノとは違い、わずかなコストで完全なクローンを作れる。さらにクラウド・コンピューティングでは、物理的な保有と所有権が切り離されるため、プロバイダー(保有者)とユーザー(所有者)はお互いを信頼し、データの安全を守ることで合意できる。
デジタル資源を1カ所に集中すればリスクが生じるが、同時に「クラウドからクラウドへ(c2c=cloud to cloud)」の相互作用の機会も増える。同じ環境に共存するデータやアプリケーション、サービスが増えれば増えるほど、優れたソリューションやフィードバックの活用が容易になる。
クラウド間コンピューティングの課題
今後は「イントラクラウド・コンピューティング」が盛んになり、それによって人間とコンピューターをつなぐインターフェースの改善が課題になるだろう。インフォスフィアにおける人間の存在やテレプレゼンス(遠隔存在)は、どの程度の入手可能性、アクセシビリティー、相互作用を確保できるかで決まる。従ってICT分野の次の重要な技術革新のいくつかは、ユーザーとコンピューターが出合うクラウドの周縁部分で起きるだろう。
最後に忘れてはならないのは、クラウド・コンピューティングは巨視的なデジタル革命の一環であり、デジタル革命はこれまでにない倫理問題を投げ掛けているということだ。今後は合成物や人工物も含め、あらゆる種類の存在と行為を本物かつ真正なものとして扱う「電子環境」に基づくアプローチが必要になるだろう。
問題は人間が自然界内部のインフォーグという役割と、自然の管理者としての役割の間で折り合いをつけられるかどうかだ。幸いこの課題の解決は不可能ではない。
(筆者はローマ大学サピエンツァ校、オックスフォード大学などを経て07年より現職。早くからコンピューター倫理に注目しフィロソフィー・オブ・インフォメーションという領域を確立。ユネスコとの共同研究でも活躍中。この記事の英語版はここ













