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新宿の「日常」:朝の酔っぱらい、喧嘩、サラリーマンの群れ──さらに新たな境地を求めて
From Tadashi Onishi @tadashionishi
<独自の境地を開き始め、世界的に評価を得るようになったストリートフォトグラファー、大西正。東京の普通のサラリーマンであり、「路上撮影者」と自負している>
ストリートフォトグラフィーはインスタグラムの登場とともに、ここ数年で写真界の大きな主流になったジャンルだ。広義の定義では、人が生活し交錯する場所を撮影したもの全てを含むが、ここでは一般に知られているように、街角や通りを中心的な舞台として、人間のドラマ(に関わる環境や、その一瞬一瞬)を切り取るものを指す。
優れた写真であれば、一瞬にしてシェアされ、それが数多くの人をインスパイアする。そのため、ストリートフォトグラフィー全体としては、写真のレベルが驚くほど上がってきている。
とはいえ、同時に諸刃の剣的な要素も生み出している。意図的にしろ無意識的にしろ、世界中のストリートフォトグラファーたちが、コピーのコピーを生み出しているようになってきたのである。
また、表面的にはカッコよくても、物語性のない、あるいは現実の匂いや生活感のしない、フェイク的な写真が多くなってきている(写真界においては、現実に存在しなくても、現実の匂いがする場合は必ずしもフェイクにならない)。
そんな中で、独自の境地を開き始めた写真家がいる。東京在住の、普通のサラリーマン。ただし真の本職は「路上撮影者」と自負しているという大西正、46歳だ。
大西が写真に興味を持ち始めたのは、8年ほど前。子供ができ、一緒に公園に行ったときに、きれいに花を撮りたくてデジタルカメラを買ったのがきっかけだという。
その後、2014年にインターネットでストリート写真を見つけ、その真髄の1つであるセットアップなしの醍醐味に魅了された。そして彼は、真剣にストリート写真を撮るようになる。独学だけでなく、日本では数少ない本格的なワークショップ(resist写真塾と、東京都写真美術館のフォトドキュメンタリー・ワークショップ)で写真を学び、才能を開花していくのである。
大西はすぐに典型的なストリートフォトグラファーの撮影術を身に着けた。被写体とすれ違いざまに、シャッターを切る。時にはフラッシュを多用し、時にはファインダーをのぞかずに。
標準広角を使用した被写体への距離感と構図の作り方が巧みなため、躍動感が溢れ出ていた。とはいえ、そうしたものはカッコよくても、すでに述べたように、本人が知らず知らずのうちに、コピーのコピーの作品になってしまっているものも多かった。それどころか、大西が被写体を撮影したつもりでも、結果的には被写体の手により撮らされた写真も存在していた(それを知ったうえで、さらにパロディ的に撮るならそれは可であるが)。
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