コラム

オバマが「無料化」を提案したコミュニティ・カレッジとは?

2015年01月22日(木)12時17分

 今週20日の晩にオバマ大統領は「年頭一般教書演説」を上下両院合同議会で行いました。年に一度の「施政方針演説」ですが、今回は昨年11月に中間選挙で大敗を喫した直後であるにも関わらず、好景気に湧く国内のムードを反映して、強気かつパワフルな演説を披露しています。久々にオバマ節復活というところです。

 演説の政策面での目玉は、格差是正策です。この政策に関しては、富裕層への課税強化など議会の多数を握る共和党の嫌がる内容が多く、実現の可能性は高くはないのですが、その格差是正策の中で特に目を引くのは「コミュニティ・カレッジ」を無料化するという部分です。

 アメリカの大学教育に関しては、アイビーリーグを頂点としたエリート教育が注目されていますが、こうした頂点だけ見れば「アメリカは能力主義の競争社会」というイメージばかりが強調されてしまいます。

 ですがその一方で、この「コミュニティ・カレッジ」という制度が象徴するような、「格差是正」そして「人生のセカンドチャンス」を与えるための制度があることも、アメリカの教育システムの一面に他なりません。

 アメリカの大学は高額なので、卒業すると借金ばかりが残る、だから「貧困大国」だなどという議論もありますが、それは極端な一面に過ぎないことが、このコミュニティ・カレッジを見れば浮かび上がってくるのです。

 コミュニティ・カレッジというのは、1950年代ぐらいまでは「ジュニア・カレッジ」と呼ばれる2年制の短期大学でした。教育内容はオフィスワークや工場労働などに必要な職業知識で、卒業すると「アソシエイト・ディグリー」つまり短大卒の資格が与えられて就職していくという流れだったのです。

 ですが60年代以降、アメリカが成熟社会化して、いわゆる「単純労働」が減少する一方で、高度な頭脳労働が大きな労働市場を形成して「コミュニティ・カレッジ」は独特の進化を遂げて行きました。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:「高市ラリー」再開か、解散検討報道で思惑

ビジネス

トランプ米大統領、クレジットカード金利に10%の上

ビジネス

関税返還となった場合でも米財務省には十分な資金=ベ

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米雇用統計予想下回る 円は
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画をネット民冷笑...「本当に痛々しい」
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 6
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 7
    美男美女と話題も「大失敗」との声も...実写版『塔の…
  • 8
    決死の嘘が救ったクリムトの肖像画 ──ナチスの迫害を…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    飛行機内で「マナー最悪」の乗客を撮影...SNS投稿が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 6
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 7
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 8
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 9
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 10
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story