レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい
ドイツ・ユータボク 旧東ドイツの都市ユータボクにある廃墟となった病院の手術室に放置された手術台
戦争が後の時代に残すもの。それはおびただしい数の戦死者の墓や、爆撃によって破壊された建物だけではない。地上戦が起これば銃撃の拠点になるはずだったとりでや、かつて多くの兵士や作業員が汗を流したであろう潜水艦の基地......。これらはすべて戦争が生み出し、後世に残した遺物たちだ。
こうしたものを見ると、40年以上に及んだ冷戦はやはり戦争だったのだと痛感させられる。大規模な戦闘自体は核による危ういバランスで避けられたものの、多くの兵器や施設、そして恐怖を生み出したことに変わりはないからだ。
戦争が生み出す多くの新しい兵器や施設は、平和が訪れると役割を失ってしまう。レーニンの像は、今は崩れ去った姿のままアートとして横たわり、核シェルターも役目を終えてひっそりと眠りに就いている。しかし同時に、そうした戦争の遺物は歴史の証人として価値を持つようにもなる。
写真家のマーティン・ローマーがカメラに収めてきたのは、冷戦の最前線だったヨーロッパに現在も残るこうした歴史の証人たちだ。その作品は静寂に包まれていながらも、戦争の記憶を雄弁に語り掛けてくる。
[2009年4月15日号掲載]
写真展 'Relikte des Kalten Krieges' (Relics of the Cold War)
ベルリン Willy-Brandt-Hausにて、2009年11月11日~2010年1月15日まで開催
写真集『 Relics of the Cold War 』 2009年10月発売
Photographs by Martin Roemers-Panos Pictures

