Picture Power

南アフリカに今も残る街の分断

UNEQUAL SCENES

Photographs by Photographs by JOHNNY MILLER

南アフリカに今も残る街の分断

UNEQUAL SCENES

Photographs by Photographs by JOHNNY MILLER

道路で隔てられた一方の区画は、庭の木々が自家用プールに影を落とす美しい住宅街。だがもう一方は、布やブリキ、車のタイヤなどを材料にした小屋が無数に立ち並ぶ貧困地区となっている。南アフリカ最大の都市ヨハネスブルク郊外の同地区では、劣悪な生活環境を改善する試みがたびたび行われてきた。しかし、国外からの労働者の大量流入などによる人口増加に対応できていないのが現状だ

物事の理解には「大所高所」からの視点が必要だ。通常、比喩的に使われるこの表現だが、実際に高い所から広い範囲を見渡すことで本質が見えやすくなることもある。

写真家ジョニー・ミラーはドローン(無人機)を飛ばして、上空から町の写真や動画を撮影。文字どおり高所から見下ろすことで、隣り合う地区で生活レベルが大きく異なるなど、経済格差が存在する現実を目に見える形で映し出した。

撮影場所は、地球上で最も格差が大きい場所の1つである南アフリカだ。この国で50年近く続いたアパルトヘイト(人種隔離政策)では、法律によって人種ごとに居住区が定められ、白人と非白人の住む場所は道路や河川、空き地の「緩衝地帯」などで区切られていた。

アパルトヘイトが撤廃されたのは1994年。しかし20年以上がたった今も南アフリカには、広い庭付きの邸宅が並ぶ区画と、狭い小屋がひしめく荒れた区画が数メートルの距離で隣接する場所が何カ所もある。

境界線と経済格差が土地と住民を分断し続けている――それが空から見下ろしたときに見えるこの国の現実だ。


<撮影:ジョニー・ミラー>
南アフリカのケープタウン在住の写真家、ジャーナリスト、ドローン操縦士。アフリカをはじめとする現代社会の問題に幅広い知識とネットワークを持つ。ドローンを使って撮影した本作は欧米で高い評価を得ている

Photographs by Johnny Miller

[本誌2017年7月4日号掲載]



【お知らせ】

『TEN YEARS OF PICTURE POWER 写真の力』

PPbook.jpg本誌に連載中の写真で世界を伝える「Picture Power」が、お陰様で連載10年を迎え1冊の本になりました。厳選した傑作25作品と、10年間に掲載した全482本の記録です。

スタンリー・グリーン/ ゲイリー・ナイト/パオロ・ペレグリン/本城直季/マーカス・ブリースデール/カイ・ウィーデンホッファー/クリス・ホンドロス/新井 卓/ティム・ヘザーリントン/リチャード・モス/岡原功祐/ゲーリー・コロナド/アリクサンドラ・ファツィーナ/ジム・ゴールドバーグ/Q・サカマキ/東川哲也/シャノン・ジェンセン/マーティン・ローマー/ギヨーム・エルボ/ジェローム・ディレイ/アンドルー・テスタ/パオロ・ウッズ/レアケ・ポッセルト/ダイナ・リトブスキー/ガイ・マーチン

新聞、ラジオ、写真誌などでも取り上げていただき、好評発売中です。


MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中