コラム

【ロシアW杯】セネガル系選手はなぜセネガル代表でプレーするか? アフリカ・サッカーの光と影

2018年06月25日(月)17時20分

ロシアW杯一次リーグ・ポーランド戦に臨むセネガル代表(2018.6.19)Christian Hartmann-REUTERS


・セネガル代表メンバーの3分の1以上がヨーロッパ出身者で、「アフリカの才能の還流」は他のアフリカの代表チームでもみられる

・そこにはヨーロッパにおける人種差別の影響がみられるが、同時に「アフリカの才能の還流」はアフリカ各国の代表チームの底上げにもなる

・ただし、それは結果的に、ヨーロッパでプレーすることを夢見る子どもを食い物にする闇ビジネスを加速させかねない

2002年の日韓大会以来、16年ぶりにW杯に帰ってきたセネガル代表は、海外のクラブチームに所属する選手だけで構成されている。これは、モロッコなど他のアフリカの代表チームが少なくとも何人かは国内リーグの選手も含んでいることと比べても異色だ。

そのなかには親がセネガル人でもヨーロッパ出身の選手も多く、23人中9人がこれにあたり、うち8人はフランス出身だ(フランスはセネガルをかつて植民地支配した歴史があり、フランス語圏のアフリカ諸国からの移民も多い)。

フランスで生まれ、フランスで活躍する選手が、ルーツであるセネガルの代表チームの一員となる背景には、人種差別の問題がある。ただし、これはヨーロッパとアフリカのサッカーをとりまく影の一部に過ぎない。

アフリカの才能の還流

FIFAの規定は、生まれた国以外でも、親や祖父母の出身国の代表チームに参加することを認めている。

しかし、移民の子としてヨーロッパで生まれた者や、幼い頃に移住して外国籍を取得した者がアフリカの代表としてW杯に参加することは、以前はさほど多くなかった。例えば2002年の日韓大会に出場したセネガル代表23人のうち、ヨーロッパ出身者は3人だけだった(フランス出身は2人)。

ところが、先述のように、ロシア大会でのセネガル代表の場合、ヨーロッパ出身者は3分の1以上にのぼる。このなかには、トリノFCのエムベイェ・ニアン、SSCナポリのカリドゥ・クリバリ、ASモナコのケイタ・バルデ・ディアオなど、名門クラブに所属する選手も含まれる。

アフリカ系ヨーロッパ出身者がアフリカの国の代表チームに参加する状況は、「アフリカの才能の還流」とも呼べる。

不利に扱われることへの不安

「アフリカの才能の還流」は、セネガルだけでなく他のアフリカ諸国でもみられる。例えば、ロシア大会のモロッコ代表の場合、23人中17人がオランダなどヨーロッパ出身者だ。

なぜ、彼らは自分の生まれた国ではなく、アフリカの代表チームの一員となることを選ぶのか。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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