コラム

英王室に爆弾を放り込んだスーパーセレブ活動家メーガン妃の野心

2020年01月11日(土)14時09分

息子のアーチーちゃんと3人のライフスタイルブランドで大儲け?(2018年10月、オーストラリア訪問時のヘンリー王子とメーガン妃) Phil Noble-REUTERS

[ロンドン発]英王室のヘンリー王子(35)と妻の元米女優メーガン妃(38)が突然、インスタグラムで「王室のシニアメンバーとして退き、財政的に独立する」と宣言し、「サセックスロイヤル」のブランドを自分たちの思うように使いたいと言い出した。

メーガン妃とヘンリー王子は「イギリスと北米でバランスを取りながら過ごす計画だ」という。

バッキンガム宮殿は即座に「ヘンリー王子とメーガン妃との話し合いは初期段階。問題は複雑で解決するのに時間がかかる」と表明した。エリザベス女王やチャールズ皇太子が善後策に頭を痛める中、メーガン妃は、アーチーちゃんを残してきたカナダに舞い戻った。

昨年4月、ヘンリー王子とメーガン妃はアーチーちゃん出産のためと言ってウィリアム王子、キャサリン妃と暮らしていたケンジントン宮殿からロンドン郊外ウィンザーのフロッグモア・コテージに引っ越した。改装費は300万ポンド(約4億2900万円)もかかった。

サセックス公爵とサセックス公爵夫人の爵位を持つ2人は同時にインスタグラムに「サセックスロイヤル」という公式アカウントを開設。ウィリアム王子とキャサリン妃の慈善団体「ロイヤルファンデーション」とも袂を分かち、「サセックスロイヤル」という団体を立ち上げた。

ハリウッド流持ち込む

「ロイヤルファンデーション」は仲の良かったウィリアム王子とキャサリン妃、ヘンリー王子の3人で盛り上げてきた。「サセックスロイヤル」の立ち上げは、生き馬の目を抜くハリウッドの荒波にもまれてきたメーガン妃がヘンリー王子を完全に取り込んだ大きな転換点になった。

メーガン妃は昨年10月の民放ITVドキュメンタリー番組で「感情を表に出さないイギリス流の繊細さに真剣に馴染もうとしたが、逆に私の内面を傷つけた」と訴えたが、メーガン妃が自分を押し殺してまで英王室のプロトコルに従ってきたとは誰も思わないだろう。

結婚式からアーチーちゃん出産、観客席の一角を占拠したウィンブルドン観戦に至るまで自分流を貫き、「タブロイド」と呼ばれる英大衆紙の集中砲火を浴びた。そして今回、優良メディアを自分たちで選別すると一方的に通告し、英ジャーナリスト全国組合から批判された。

ヘンリー王子とメーガン妃の公費の5%はソブリングラント(王室の活動費)で賄われている。英大衆紙デーリー・メールによると、推定200万ポンド(約2億8600万円)。これを返上する代わりに現在は禁じられている資金調達を自分たちで行おうというのだ。

<参考記事>英ハリー王子夫妻は、どうやって王室から「財政的に独立」するのか?
<参考記事>ヘンリー王子との結婚「考えが甘かった」と重圧を語るメーガン妃、率直な告白に大きな反響

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国スマホ販売、第1四半期はアップル19%減 20

ビジネス

英インフレ率目標の維持、労働市場の緩みが鍵=ハスケ

ワールド

ガザ病院敷地内から数百人の遺体、国連当局者「恐怖を

ワールド

ウクライナ、海外在住男性への領事サービス停止 徴兵
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 9

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 10

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story