コラム

日本よ!「反韓・嫌韓」は時間の無駄だ

2019年03月18日(月)12時33分

亡くなった元慰安婦の写真を掲げて日本に抗議する韓国人(2018年8月15日、韓国ソウル) Kim Hong-Ji-REUTERS

<いったんその毒に侵されてしまうと、偏狭なナショナリズムのサイクルから永遠に抜け出せなくなる。それこそ韓国の思う壺だ>

[ロンドン発]大恐慌(1929)しかり、第二次大戦(1949)しかり、天安門事件(1989)とベルリンの壁崩壊(1989)しかり......。「9」で終わる年は荒れるという。

今から100年前の1919年には日本統治下の朝鮮で三・一独立運動が起き、第一次大戦後のベルサイユ条約で山東省の利権が日本に認められたことから中国では抗日の五・四運動が広がった。

三・一独立運動から100年を迎えた3月1日、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は「親日残滓(ざんし)の清算」を進めると演説した。「親日」とは韓国では日本統治下で日本の軍隊や警察に関わった人物を指すそうだ。

日本人の耳にはギョッとするような響きを持つ「親日残滓」という言葉だが、韓国文化体育観光部の世論調査では韓国人の8割は「親日残滓」は清算されていないと回答している。

その理由は政治家、高級官僚、財閥は親日の子孫に支配されていると考えている人が多いからだという。「親日残滓の清算」をテーマにした映画はロンドンの韓国レストランでも流されている。

どんなに焚き付けられても

文大統領は独立運動に関して「約7500人の朝鮮人が殺害された」と述べたことについて、日本の外務省は「歴史家の間でも争いがある数字だ」と反発した。

韓国経済が減速するとともに、昨年初めには70%を超えていた文大統領の支持率は一時45%を割り込んだ。韓国の日本叩きは支持率の低迷と決して無関係ではない。

昨年10月、徴用工問題で韓国大法院(最高裁)が日系企業の差し戻し上告を棄却、損害賠償の支払いを命じた。日系企業の韓国国内資産の差し押さえも始まった。

昨年12月、韓国海軍艦艇が自衛隊哨戒機へ火器管制レーダーを照射。

今年2月、韓日議員連盟会長を務めたこともある韓国の文喜相(ムンヒサン)国会議長が米ブルームバーグのインタビューに「戦争犯罪の主犯の息子」である日本の天皇が元慰安婦に謝罪すれば慰安婦問題は解決すると発言。

慰安婦像問題に加えて、これだけ韓国側から焚き付けられれば、どんなに温厚で冷静な人でも反応しない方がおかしい。しかし日本は感情的にならず、現実的に対処した方が賢明だ。

英国の欧州連合(EU)離脱の取材でも、旧植民地と旧宗主国の関係はいずこも一筋縄ではいかないことを実感させられる。

日本が韓国を支配したのは1910年から35年間。日本がお手本とした英国がアイルランドを支配するようになったのは12世紀以降。1801年に併合されたが、その後のジャガイモ飢饉でアイルランド人は80万~150万人が死亡、150万~200万人が移住した。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は1100円超安で全面安、東京エレクが約2

ワールド

イスラエルのイラン報復、的を絞った対応望む=イタリ

ビジネス

米ゴールドマン、24年と25年の北海ブレント価格予

ワールド

官僚時代は「米と対立ばかり」、訪米は隔世の感=斎藤
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story