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議論呼ぶPCパーツメーカーによる「リビジョン商法」とは何か?

2015年02月24日(火)12時00分

スペックダウンした事実を伝わりにくくしているとユーザーたちは感じている

 違法性はなさそうだ。だがユーザーからは販売姿勢に疑問の声が上がっていた。その声をヨーロッパやアジア各国のメディアが次々と取り上げたことで、昨年末以来、この問題が広がりを見せ始めた。パソコンの主要部品を組み込んだ基板である「マザーボード」において、気づかないうちにスペックダウンした商品を購入してしまう可能性がある販売手法を、一部のメーカーが取っているというのだ。一般のパソコンユーザーの大半にとって、マザーボード単体を購入する機会はほとんどないが、高性能を求めるヘビーユーザーやホビーユーザーが自作パソコンを組み立てる際に、自分の欲しい機能や性能を持ったマザーボードを購入している。

 マザーボードで比較的小さな仕様変更やバグ修正などが行われた際、製品の改訂履歴を示す「リビジョン(revision)」を変更して発売することは従来から行われており、一般に認知もされている。また、同等のスペックを維持する前提で、構成部品を変更しコストダウンを行うことも珍しくはない。ソフトウェアのバージョンと同じように「Rev. 1.0」「Rev. 2.0」と更新のたびに数字が大きくなっていく。そのこと自体に問題はない。問題視されているのは、製品の性能に大きな影響のある仕様変更を行っていながら、リビジョンの更新だけに留めて、商品識別コードを更新しないというケースだ。

 流通業者や販売店、Amazonなどのオンラインストアの多くは、バーコードにも付記されているJAN、EAN、UPCといった商品識別コードで商品を管理している。そのコードが更新されなければ、従来の商品とリビジョン更新後の商品は同一のものとして扱われてしまうのだ。とくにオンラインストアでは、同一商品という認識ならば商品写真の変更が行われないことが多いので、画像から製品仕様の変更があったことは判断できない。また、古いリビジョンの製品に対するレビューを参照して、同じ製品と思い込んで購入してしまうユーザーが現れることになる。

 それでもリビジョン更新がユーザーにとって有益なものであれば問題は少ないが、コストダウンのための部品の省略や変更の影響で、リビジョン更新後の方が性能が劣るケースも報告されている。欧米4か国で展開するパソコン部品専門のニュースサイトHardware.Infoの英国版が2014年12月22日付で掲載した検証記事では、GIGABYTEの同じ製品名と商品識別コードを持つ製品の2つのリビジョンによる違いを、処理速度を計測するベンチマークテストも交えて比較している。同記事では、処理の内容によってはリビジョンが新しい製品の方が古い製品よりも性能が劣ることが示されている。

 仕様の見直しによってコストダウンを図り、利益を上げたいメーカーの意向そのものは理解できる。だがそれなら製品名や型番を変更するか、少なくとも商品識別コードを変えて、違う商品として流通するようにしてほしいというのがユーザーたちの声だ。性能を犠牲にしたコストダウンを行った製品が、従来品と区別がつかない状態で流通しているとしたら、意図的に仕様変更があったことを判別しにくくしているととられることもあるだろう。商品が手元に届いたユーザーがそれに気づけば、少なくともいい印象は持たないはずだ。この体験は、長期的にはメーカー、そしてPC業界全体にも不利益をもたらすことになるのではないか。

 国内のパソコン関連ニュースサイトなどで執筆するテクニカルライターで自作パソコンの世界にも詳しい笠原一輝氏は「自作パソコンのパーツ」という商品の特殊性を指摘する。もともとマザーボードはパソコンの部品を単体で売るという性格のもので、それが「コンシューマ向け商品」かどうかは微妙なところだという。「一般に電気製品の部品にはリビジョンによる違いがあり、新しいリビジョンの方が必ずしも性能がいいというわけではありません。そのことは多くの日本の自作パソコンユーザーも認知しています」。

 ユーザー側としては、マザーボードを購入する際には知識や情報を収集して、商品をしっかり見極める必要がありそうだ。「メーカーも悪意があって(リビジョン更新をわかりにくくすることを)やっているわけでないでしょう。ただ、メーカーの説明が足りなかった、というユーザーの声に対してはその通りだと思います。(リビジョン更新の内容について)もっと情報をわかりやすく公開した方がよいのではないでしょうか」と笠原氏は言う。

 マザーボード購入者の多くは、もっとも熱心にパソコンを愛する人たちだ。彼らとの信頼関係を取り戻すために、一部のメーカーにはより詳細でわかりやすい情報の開示が求められていると言えよう。

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