ニュース速報

ビジネス

アングル:不正操作疑惑の恐怖指数、AIなど改善策導入へ

2018年09月23日(日)08時49分

 9月20日、米ボラティリティー・インデックス(恐怖指数、VIX)が不正操作に弱いとの批判に応えるため、米シカゴ・オプション取引所の運営会社CBOEグローバル・マーケッツが人工知能(AI)の導入を含めた複数の改善措置を進めている。NY証券取引所で18日撮影(2018年 ロイター/Brendan McDermid)

[ニューヨーク 20日 ロイター] - 米ボラティリティー・インデックス(恐怖指数、VIX)が不正操作に弱いとの批判に応えるため、米シカゴ・オプション取引所(CBOE)の運営会社CBOEグローバル・マーケッツが人工知能(AI)の導入を含めた複数の改善措置を進めている。

今年2月には、VIXの不正操作が複雑なデリバティブの波乱を招いたとの批判が出た。

●VIXとは

米S&P総合500種株価指数<.SPX>のオプション取引に基づき、米国株の30日間の予想ボラティリティーを示す指数。先物やオプションなどVIXの派生商品は毎月第3、もしくは第4水曜日に期落ちを迎え、最終的な清算価格はVIXの月次清算によって決まる。

清算価格は一連のS&Pオプションの取引始値を使って算出される。算出対象のオプションの中に始値がついていないものがあった場合には、そのオプションの売りと買いの呼び値の平均を使う。

●どんな批判が出ているのか

誰かが作為的に対象オプションの価格を引き上げるなどして清算価格を操作できる可能性は、以前から議論されてきた。

昨年5月にテキサス大経営大学院の学者らが論文で、VIXの清算時にS&P500種オプションの出来高が急増していると指摘して以来、こうした疑念の信ぴょう性が高まった。

論文はこの現象について、相場操縦以外の可能性も排除しないとしつつも、総合的証拠に照らすと相場操縦が疑われると結論付けている。

論文の発表以来、相場操縦により損失を被ったとするトレーダーからの訴訟は10件を超えた。訴訟はおおむね、複数の関係者がVIX清算価格を動かす意図でS&Pオプションの注文を入れたと主張している。

●CBOEの対応

CBOEは、清算の前後にS&P500オプションの出来高が急増することについて、必ずしも相場操縦を意味しないと主張する。

期落ちが迫ったVIX派生商品を保有するトレーダーが、ボラティリティを予想する取引の手段をVIX商品からS&P500オプションに乗り換える動きによって、出来高急増が説明できる可能性があるという。

CBOEは流動性を高めるため、清算時の入札に参加できる業者の数を増やした。

ここ数カ月は入札が波乱なく進んだため、懸念はやや和らいだが、投資家は今後とも清算の様子を見守る構えだ。

●VIXは改善の必要があるか

一部の市場参加者からは、流動性を高めたり、清算入札の監視を強めるだけでは不十分との声も出ている。CBOE自体がVIXの仕組みを変更する必要性が指摘されている。

こうした市場参加者によると、VIXは、市場実勢に近い価格で取引されているオプションだけでなく、幅広いオプションに基づいて算出されるため、操作されやすい。S&Pオプションのうち、通常であれば不人気で取引されないような特定の商品を大量に買うだけで、清算価格に影響を及ぼせるという。

(Saqib Iqbal Ahmed記者 John McCrank記者)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:「すべてを失った」避難民850万人、スー

ビジネス

出光、JERA保有の富士石油株を追加取得 持分法適

ビジネス

英賃金上昇率、12─2月は前年比6.0%に鈍化

ビジネス

日経平均は大幅続落、米金利上昇や中東情勢警戒 「過
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 5

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 6

    キャサリン妃は最高のお手本...すでに「完璧なカーテ…

  • 7

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

  • 8

    中国もトルコもUAEも......米経済制裁の効果で世界が…

  • 9

    中国の「過剰生産」よりも「貯蓄志向」のほうが問題.…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入、強烈な爆発で「木端微塵」に...ウクライナが映像公開

  • 4

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 5

    ドイツ空軍ユーロファイター、緊迫のバルト海でロシ…

  • 6

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 7

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 8

    金価格、今年2倍超に高騰か──スイスの著名ストラテジ…

  • 9

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 10

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中