さよならブラウン、さよなら労働党
これで5月6日の総選挙に決着がついた。ゴードン・ブラウンはイギリスの首相を辞任した。
05年の総選挙で労働党の議席を大幅に減らして辞任したトニー・ブレアの後を継ぐ形で長年待ち望んだ首相の座を手に入れて3年、不人気をかこち続けた。将来、イギリスの偉大な指導者として思い出されることはまずなく、それもおそらく自業自得なのだろう。
だが、時代の犠牲になった面もなくはない。野党・保守党のデービッド・キャメロン党首がダウニング街10番地(首相官邸)の新たな住人に選ばれた大きな要因の一つは世界金融危機。ブラウン自身が対応を誤ったわけではない。歴史的な大波にも「ほぼ適切に対処した」ことは、保守派を自任する英エコノミスト誌さえ認めている。
■「永遠の過半数」体制のはずが
13年間の長期労働党政権を作る原動力となった「ニューレーバー(新しい労働党)」のスローガンはとうに色褪せ、有権者は変化を渇望していた。私が大学生だったときにある教授が、労働党はトニー・ブレアのおかげで日本の自由民主党のような「永遠の過半数」体制を築いたかもしれないと自信たっぷりに語っていたことを思い出す。その両党がそろって政権の座から追われたのは、政治の世界で唯一変わらないのは変化だけ、という教訓だろう。
キャメロンは新首相として、いきなり未決書類の山に直面することになる。とくに、選挙戦ではほとんど争点にならなかったフォークランド問題などの外交政策は難題だ。
──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2010年05月11日(火)16時15分更新]
Reprinted with permission from FP Passport, 11/5/2010. © 2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.
W杯アメリカ敗退を祈る南ア警察
先月、世界46カ国の首脳を招いて核安全保障サミットを開いたときのワシントンの厳戒態勢を覚えているだろうか。市の大半は立ち入り禁止になり、舗道沿いにはワシントンD.C.首都警察の警官がずらりと並び、20台もの車両に守られた外国首脳の車列が通るたびに道路は通行止めにされた。
6月11日にサッカーのワールドカップ(W杯)が始まれば、開催国の南アフリカはこれと似た立場に立たされることになる。既に観戦を表明している外国首脳は43人。だが、南ア警察トップを顔面蒼白にさせているのはこの43人ではなく、もしかしたらこれから来ると言い出すかもしれない44番目の指導者、バラク・オバマ米大統領だ。
■1人に43人分の警備が必要
7日の閣議でW杯中の警備計画について説明したベキ・ツェレ警視総監は、もしオバマが来た場合、それがアメリカの大統領であること、彼をひと目見ようとする群衆が殺到することなどを考え合わせると、警備の規模を倍増させなければならないと言った。「他の43人分と同じ警備が一人のために必要になる」
負担のあまりの大きさに、警視総監はアメリカが1次リーグで敗退することを「祈っている」という。それ以上勝ち進めば、オバマが観戦に来ると噂されているからだ。アメリカ代表のために、警視総監の祈りが通じないことを祈ろう。
──ケイバン・ファーザナ
[米国東部時間2010年05月10日(月)17時29分更新]
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ハチャメチャ国会ウクライナ編
ウクライナの愛国主義者は、親ロ派のビクトル・ヤヌコビッチが大統領に選ばれた2月以降、ロシアが内政に影響力を強めていることに苛立っている。4月27日の国会では、野党が発煙弾や卵を投げるなどしてその憤懣を爆発させた。与党が、ロシア黒海艦隊のウクライナ駐留期限を2042年まで延長すると決めたのがきっかけだ。
この乱闘は、なかなか見応えのある写真と映像を提供してくれた。だが、喧嘩っ早い国会はウクライナだけではない。詳しくは本サイト掲載の「世界で一番ハチャメチャな国会はどこ?」でどうぞ。
──ケイバン・ファーザナ
[米国東部時間2010年04月27日(火)15時03分更新]
Reprinted with permission from FP Passport, 28/4/2010. © 2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.
バキエフを匿うベラルーシの冒険
これは、とても興味深い話だ。
ベラルーシで独裁体制を敷くアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は4月20日、「(中央アジア・キルギスの政変で辞任したクルマンベク・)バキエフ前大統領は家族と共に首都ミンスクに滞在しており、ベラルーシと私個人の保護下にある」と言った。だがバキエフの存在は、西側と隣国ロシアとベラルーシの関係を両方とも悪化させかねない。身柄の引き渡しを求めるであろうキルギスとの関係もだ。
バキエフを保護することは、ロシアに公然と挑戦状を叩きつけるようなもの。多くの専門家によれば、ロシアはキルギスの政変を支持、いや支援さえしたと指摘する。バキエフが昨年、米軍が駐留するマナス基地を閉鎖する約束を反故にしたからだという。
モスクワで反バキエフ派と会ったりテレビでバキエフ政権批判を行ったり、ロシアがキルギス政変前に果たした役割も次第に明らかになってきている。ロシアの勢力圏内にある他の専制国家はこれにどういう反応を示すのだろう。
ルカシェンコ政権は、グルジアからの南オセチアとアブハジア自治共和国の独立を承認させようとするロシアの圧力に抵抗してきた。両地域はグルジアに属するとして独立を認めていないEU(欧州連合)とロシアを両天秤にかけてのことだ。
ベラルーシの大統領選を来年に控え、ロシアはルカシェンコにも圧力をかけ始めるのだろうか。
──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2010年04月20日(火)12時19分更新]
Reprinted with permission from FP Passport, 20/4/2010. ©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.
金正日後継者、スクープ写真はやはり別人?
毎日新聞は4月20日、「スクープ記事」を掲載したように見えた。北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記の三男で、後継の有力候補とされているジョンウンを、近影の写真で特定したのだ。
ここ数カ月、ジョンウンへの権力移行に向けて着々と準備が進められているという報道が北朝鮮から少しずつ伝えられてはいるが(北朝鮮の後継争いに関するクリスチャン・カリルの最新のリポートも参照してほしい)、ジョンウンの最近の姿を写した写真は存在しなかった。メディアはこれまで、ジョンウンの子供時代の写真を使っていた。
毎日新聞英語版はこう報じている。
ほとんどの写真には、紺色のスーツとみられる服に赤のネクタイ、黒っぽいコート姿で金総書記の隣に立つジョンウンが映っている。現地の案内人の説明を一緒に聞いているように見える。その中の1枚には、ペンを持ちながらメモ帳を広げるジョンウンの姿が映っている。
現地メディアは具体的な日時を伝えていないが、製鉄連合企業所を現地指導してから数日以内に報道されている可能性が高い。
関係者によると、平壌のある衣類関連企業で、「今日(3月5日)の労働新聞(朝鮮労働党機関紙)をしっかり見るように」との指示が出された。職員の1人が上司に「何が載っているのか」と尋ねると、上司は「金大将(ジョンウンの愛称)のお姿がたくさん掲載されている」と答えたという。
だが韓国筋は、写真の人物が本当にジョンウンかどうかは疑わしいとしている。韓国の英字紙コリア・タイムズはこう報じている。
韓国統一省の当局者は、報道を否定。写真の人物はジョンウンではなく、金正日が視察に訪れた咸鏡北道の金策製鉄連合企業所の関係者だと思われるとコメントしている。匿名で取材に応じたこの当局者によると、金正日が同企業所を視察に訪れた09年の2月と12月、さらに10年の3月にも、この男性と同一の人物が写真に写っていたという。
「このことから、統一省はこの人物が同企業所で働く関係者だと考えている」とこの当局者は語っている。
他の韓国政府関係者は、毎日新聞の報じた男性は30代か40代に見え、現在26歳のジョンウンにしては明らかに年齢が高いようだと話している。
こうした疑問の声にも関わらず、毎日新聞は写真の人物がジョンウンだとする姿勢を崩していない。
何より、この騒動は北朝鮮に関する報道の重大な問題点を明らかにしている。北朝鮮関連のニュースは、いつでも刺激的で、ほとんどが信頼性に欠ける。最もセンセーショナルなスクープをねらおうと、韓国と日本のメディアの報道合戦が過熱するなかで今回のような記事が出たのではないかとも考えたくなる。
単なる噂や信用性の疑わしい匿名の情報源に頼るしかないというのが北朝鮮取材の実情だ。頭に血の上った記者たちは、いとも簡単にカモになりかねない。
──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2010年04月20日(水)13時17分更新]
Reprinted with permission from FP Passport, 21/4/2010. ©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.


